MUJIキャラバン

石巻で働く

2014年08月20日

東日本大震災から3年と4ヵ月が過ぎました。

ほぼ全域が津波に襲われた石巻市は、
3000名以上の死者を出し、現在も400名以上の行方不明者がいる
という大きな被害を受けました。

仙台駅からおよそ55km、車で1~1.5時間で行けるという立地のため、
震災当時から数多くのボランティアの拠点となっていた石巻には、
今もなお、そこを拠点に活動する人たちがいます。

震災から3ヵ月後の2011年6月に個人ボランティアで石巻に入った
ヤフー株式会社の長谷川琢也さんは、
その年の夏頃から会社を巻き込んで復興に取り組んでいます。

2011年12月には、東北の産品を扱う「復興デパートメント」を開設し、

2012年7月末からは石巻市街地に、
復興支援の拠点となる現地事務所「ヤフー石巻復興ベース」を河北新報社と共同で設置。

"ITを駆使して地元の人と一緒に新しい石巻を創る"というコンセプトの下、
ボランティアではなくビジネスとしての支援活動を続けています。

そんな彼らが去年から手掛けている「ツール・ド・東北」(河北新報社と共催)は、
復興支援と震災の記憶を風化させないことを目的として、
「被災地にいかに人に来てもらうか」
「被災地の現状や東北の魅力を知ってもらうか」をテーマに、
10年間継続して開催するプロジェクト。

インターネット関係ではないけれど、
できることを模索しているなかで生まれたものです。

昨年度は約1300名が参加し、宮城・三陸を駆け抜けました。
参加者からは、
「これまで東北に来たくても来られなかったけど、いい機会になった」

「応援するつもりで来たら、逆に応援されてしまった」

そんな声が上がっていたといいます。

本年度の「ツール・ド・東北」は、2014年9月14日(日)開催されます。
気仙沼まで続く220kmのコースが新設されたほか、
昨年の倍となる3000人が参加する予定です。

また、長谷川さんが今力を入れているのが、若手漁師による新しい水産業づくり。

「水産業は漁師なくしては発展も存続もありません。
漁師が減少しているなかで、若い人に漁師に興味を持ってもらえる活動を始めています」

これまであまり実態が見えてこなかった水産業において、
横のつながりを活かした最強チームによる直販開拓に情報共有、
漁師にしかできない商品開発や、漁師と会えるイベントなどを行っています。

「僕は横浜出身でずっと都会にいたから、何も知らずに生きてきました。
ワカメに旬があるって知っていました?
採りたてワカメでする"ワカメしゃぶしゃぶ"ってめちゃくちゃおいしいんですよ!
自分が知った感動を知ったからには他の人にも届けたい、そう思ってやっています」

※写真左手前が長谷川さん

石巻で活動を始めて、まもなく3年を迎える長谷川さん。
移住してから2年経って、ようやく地元の人との人間関係が築けてきたといいます。

「仲良くなった奴らと一緒に何かしたいと思って。
東京にいた頃は俺なんて何もできないと思っていたけど、
こっちに来て、周りから『はせたくさんのおかげです』って言われると、
一人一人持っている能力が違って、それぞれにできることがあるって、
そう思うようになりました」

3年4ヵ月経った石巻の現状について尋ねると、
地元でも徐々に風化しつつある、という答えが返ってきました。

当初は新しいことを頑張ろうとする人も多かったようですが、
時が経つにつれ、普通の生活を望む人ももちろん出てきます。

「"復興"の意味もニーズも、人それぞれ違います。
この土地に残る何かを作りたい。
いいモノが廃れることを防げたら、それがゴールかもしれません」

実は、誕生日が3月11日だという、長谷川さん。

「東北には何らかの形で一生かかわっていくつもりです」

と最後に話してくれました。

祝うべき誕生日に起こってしまった大震災を自分事として捉え、
会社を巻き込んで活動する長谷川さんの姿に、
今一度、自分の出来ることが何かを考えさせられました。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

最新の記事一覧

カテゴリー