飲む野菜の酢「SURARA」
浅間山の山懐に抱かれた佐久(さく)市は、長野県屈指の米どころ。
この地では、八ヶ岳の伏流水とその冷涼な気候を利用した酒造りが
昔から盛んに行われてきたそうです。
今回は、1887年創業の「芙蓉酒造」さんを訪ねてきました。
酒蔵ではお酒造りの真っ最中ですが、
お酒造りは寒い冬に行うものだったはず。
伺ったところ、
「日本酒は低い温度でゆっくりと発酵させていくものですが、
焼酎は暖かい中でも造れるんですよ」
と教えてくださいました。
確かに東北地方では日本酒が多く、九州地方では焼酎が
多く造られていますものね。
蔵を見せていただくと、長いも、ねずみ大根、
レタス、かぼちゃ、えのきだけ
などと書かれた樽がたくさん。
お芋以外の「野菜焼酎」って、
ありそうでこれまでに出会ってこなかったものです。
お酒造りは、原料によって必要な免許が違ってくるようで、
野菜を使った焼酎を造れる酒蔵は数少ないんだそう。
その情報は口コミで広がり、芙蓉酒造さんでは、
信州で採れた地の野菜を使った焼酎造りをはじめ、
全国の特産物を使った焼酎も委託製造されているそうです。
さて、これまでにも何軒か酒蔵さんにお邪魔してきた私たちですが、
やはりまだまだ分からないことが多いお酒造り。
すると、
「僕ももともと素人でしたから。そもそも飲料には
」
と、黒板を使って丁寧に説明くださりました。
教えてくださった、企画開発部部長の依田さんは、
もともと東京で音楽業界の仕事をしていたそうですが、
4年前に実家に戻り、お酒造りを始められたそう。
そして、彼が1人で企画・開発・製造を手がけるのが、
Found MUJIを扱う店舗で販売中の
「飲む野菜の酢SURARA」なんです。
レタスは清涼感があり、かぼちゃはほっこりと甘く、
えのき茸はまろやかな味わいが魅力です。
いろいろな種類の焼酎が増えてきて、
それを何かに活かせないか
というところから
考案されたのがお酢造りだったといいます。
「負けん気が強いんで、手ぶらで実家に帰るのは嫌だったんです」
と依田さん。
東京で働きながらも、週末に情報収集を重ね、
3年間の研究を経て、2011年7月に発売したのがこの飲む酢でした。
お酢造りの工程は、途中までお酒造りのそれと同じだそうですが、
全国的に見ても、酒蔵がお酢を造るのは珍しいのだそう。
それよりも、むしろタブーとされてきたんだとか。
「初め、お酢造りの構想を父親に話したら、猛反対を受けました。
他の周りの人からもバカか
と言われましたね」
さらに、お酒業界は情報流通があるようなのですが、
お酢業界には情報の流通があまりないのだそう。
「お酢造りについて、聞く相手がいなかったのが一番大変でした」
業界の常識を打ち破ってまでSURARAを生み出した依田さんには、
並々ならない信念を感じました。
"お酢を楽しく飲んで、健康で軽やかな人生を過ごして欲しい"
というコンセプトのSURARAは、
ドリンクとして飲むほかに、料理の調味料としても、
もちろんお酒と合わせても相性バツグンだそう♪
永年培われてきた技術を活かして、新たなコトに取り組む姿勢。
モノづくりだけでなく何事にも、参考にできるヒントではないでしょうか。