MUJIキャラバン

美味しい食づくりを通じて伝える心

2012年06月22日

長野県下高井郡、野沢温泉村。

日本屈指の標高差を誇るスキー場を有する温泉街には、
冬になると世界中からスキーヤーたちが集まります。

この地を初夏に訪れた私たち。

そこには、熱い温泉と熱い想いを持った人たちによる、
オフシーズンでも楽しめる、様々な取り組みが待ち受けていました。

まず訪れた先が、村のホテル「住吉屋」さん。

風情ある旅館といった雰囲気ですが、
前社長がホテルのプライベート性と旅館のサービスの良いところを目指して
「村のホテル」と命名したそう。

また、贅を尽くしたサービスよりも、
普段着の心でのお出迎えをモットーに、
料理も、野沢で昔ながらに食されているおかずを提供しています。

その代表格が"取り回し鉢"と呼ばれる、
野沢に江戸時代から伝わる祝い膳料理。

特別な材料を使ったものではなく、
地元の野菜や山菜を使った田舎料理で、
夕飯時に2〜3品選ぶことができるそう。

素材の持ち味を生かした素朴な味付けで、
都会ではなかなか巡り合えない味わいです。

それもキチンとした説明と共に提供してくれるのが、うれしいところ。

こうした昔ながらに食べられている味覚こそが、
本当に旅人が求める味なのではないでしょうか?

過剰なサービスはありませんが、十分に心のこもった住吉屋さんのお出迎えは、
無印良品的な宿とでも言いたくなるほど心地の良いものでした。

続いて訪れたのは、ハウスサンアントンジャム工房。

オーストリアで学ばれたというジャムづくりを手掛けるのは、
なんと過去2回もスキーの日本代表としてオリンピックに出場したことのある、
片桐幹雄さんと奥様の逸子さん。

主に長野で採れる厳選した果実と、
腕自慢のシェフの力を使って、
「素材に新しい命を吹き込むようなピュアで素材感たっぷりのジャムを作ろう!」
という想いから、ジャム作りをスタートされたようです。

「同じフルーツでも、その年の気候で味も香りも異なるんです。
素材そのものの味を引き出すよう心掛けているので、
毎年、味が違うんですよ。ほら、ワインだってそうでしょ」

そう話す片桐さんご夫妻のジャム&ジュースは、
常に最高の出来を追求した逸品です。

そのお味は、口の中いっぱいに自然の甘みが広がりました。

Found MUJIを扱う一部の無印良品の店舗でも、
お買い求め頂けます。

こうしてジャムの製造販売を始めたことによって、
スキーのオフシーズンでも、
この地に雇用を生み出していくことができるようになったと言います。

そんなハウスサンアントンさんのジャムがよく合うパン工房があると紹介され、
伺ったのは、長野市にある「ベッカライ麦星」。

偶然にも前述の片桐さんと同様、
オーストリアでパンづくりを学ばれてきたという鈴木さんご夫婦が営む、
ライ麦パンを主としたパン屋さんです。

薪で焼き上げる理由は、
間伐材を燃料にすることで少しでも森の循環を取り戻したかったから。

ライ麦というのも、雪国でも育つ農作物として、
追々は近隣の休耕畑を生かしたいと考えているからだそう。

一つひとつに想いのある工程から作られたライ麦パンは、
想像していたような酸味は少なく、まろやかな甘みすら感じる味でした。

「ライ麦パンというのは、正しく発酵させてあげれば、
酸味を抑えることができるんです。
今はまだまだですが、美味しいライ麦パンづくりを通じて、地域に貢献したい」

ここにも一つ、これからの時代における、
ものづくりのヒントが眠っていました。

美味しい食づくりを通じて心を伝え、
それが新たな需要を生み出すことに繋がる。

長野で出会った取り組みは、着実に実を結び始めています。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

最新の記事一覧

カテゴリー