MUJIキャラバン

想いを結び込む、水引

2014年06月25日

結婚式のご祝儀や入学祝い、出産祝いなどのお祝い事の際に、
品物や封筒を結ぶ、「水引」。

この「水引」に関するとても興味深い話を
最盛期は全国の水引製品の約70%を生産し、
現在もなお高いシェアを誇っている、長野県飯田市で聞くことができました。

「飯田はキレイな水が流れる町で、江戸時代から紙漉きが盛んでした。
朝廷にも紙を納めていたのですが、
紙を整える際に切り落とした端紙を使って、"元結(もとゆい)"を作っていたんです」

そう飯田水引の歴史から教えてくださったのは、
明治元年創業、老舗の水引屋である
大橋丹治株式会社の専務、5代目大橋丹治さんです。

元結とは髪を結ぶ道具のことで、昔は生活必需品でした。

飯田で漉かれていた、薄くて丈夫な「ひさかた和紙」を使って、
美濃の国(現在の岐阜県)から和紙職人の桜井文七氏を招いて習った元結は、
その質の高さから、「文七元結」として全国にその名を知られるようになったそう。

しかし、明治維新の断髪令により、元結の消費は減少。
その後、元結の技術を生かした水引製品の生産へとシフトすることになりました。

ちなみに、水引という名の由来は、
長くしつらえた紙縒(こより)に、水のりを引いて作ることからだそう。

大橋さんの家業も、元結製造に始まり、水引製造へと移り、
現在は水引の加工を中心に行っています。

以前は結納のための水引セットが主力商品だったそうですが、

最近は、結婚式を挙げるカップルが減ってきており、
ましてや結納をするカップルはさらに減ってしまっています。

「残念ですが、時代の流れは変えられない。
何か別の切り口で、現代のニーズにあったものを作らないと」

4年前に帰郷して家業に入った大橋さんは、
販路開拓のために、新商品の開発に奮闘。
水引のピアスや、ラッピング用資材としての水引を生み出しました。

以来、ありそうでなかった新しい水引は、様々なメーカーのラッピングや、
結婚式の引き出物に招待状、個人のプレゼントと幅広い反響を得ています。

もともとこの水引の由来は、飛鳥時代に遣隋使である小野妹子が帰朝の際、
隋国より日本の朝廷に贈られた贈り物に、
紅白で染め分けた麻ひもが結んであったことが始まりだそう。

「帰途海路の平穏無事を祈願してのことで、
そこから何か贈り物をする時には、想いを一緒に結び込んで贈る習慣ができたようです」

戦時中にも、出兵兵士の無事を願って、
金封を水引で結んで渡していたといいます。

そんなお守りの代わりともいえそうな意味を持つ水引。
実は、現在も結び方に意味が込められているということを知りました。

ご祝儀袋でよく見るこちらの結びは「あわじ結び」というもの。

結び目がアワビの形に似ていることからついた名ともいわれていますが、
一度ほどいてしまうと二度と結べないことから、「結び切り」と呼ばれています。

「一度きりで繰り返さない」という意味が込められており、
結婚式や快気祝い、お葬式などに用いられる結び方なのです。

これをアレンジしたのが「梅結び」。

目の前で職人さんに結んでいただくと、ものの1分ほどで完成。
手の感覚で順序を覚えているといいます。

一方、こちらは「蝶結び(花結び)」と呼ばれるもの。

簡単に結びなおすことができるので、「何度あってもよい」という意味から、
出産祝いや入学祝いなどに使われます。

このように、水引は時代を超えて、
贈り物をする際に自分の想いも結び込んで贈るという、
日本独特の文化として受け継がれてきました。

「今後は、世界を舞台にラッピングという分野で
水引を広めていきたいですね」

最後にそう野望を語った、大橋さん。

素材や形状などが時代とともに変わっていったとしても、
「気持ちを込めて贈り物を結ぶ」という水引の考え方は、
日本人として、未来に残していきたい大切な文化ではないでしょうか。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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