MUJIキャラバン

対馬の海と森が育てた塩

2013年11月13日

長崎県に属する島、「対馬」(つしま)。
九州と韓国の間の対馬海峡に浮かぶことから、"国境の島"と呼ばれています。

長崎空港、福岡空港から飛行機で約30分、
または博多港からフェリーで、4時間前後で行くことができます。

対馬は島の約89%が山地で、山のミネラルがそのまま海に注ぎ込んでいます。

「対馬の海はとてもキレイで海藻の宝庫。
これだけの海と海藻があるんだから、それを活かした塩を作りたいと思いまして」

株式会社白松の浜御塩(はまみしお)工房を訪ねると、
代表の白木桂介さんが迎えてくださいました。

「もともとは塩の輸入からスタートしました。
専売法解禁後、やはり国産の塩づくりがしたいと思うようになり、
日本全国の塩を調べていくなかで、対馬にたどり着いたんです」

白木さんたちは、"アラメ"や"ホンダワラ"といった海藻を使った
藻塩の作り方を独自に開発。
その作り方を見せていただきました。

まず、取水した海水を逆浸透膜や立体式塩田で濃度を上げていきます。

続いて、塩分濃度の上がった海水に海藻を入れて煮詰め、
平釜で炊いていきます。
海藻をじっくり煮詰めることで、旨み成分が海水に溶け込んでいくのです。

また、この工房では他では見たことのない、
珍しい現場を目にすることができました。

それは、塩工房とパイプでつながったこの小屋の中にあり、
入るとヒノキ風呂のような、木の香りが漂います。

それもそのはず、こちらの塩工房では2011年からバイオマスボイラを導入。
木材チップを燃やして、その蒸気熱を使って釜を焚いていました。

「うちの塩づくりの理念は『ミネラル還元運動』なんです。
山のミネラルが海になり、海水とそこで育った海藻から塩ができる。
燃料には対馬の山から採れる間伐材を利用しています」

工場長の権藤正展(ごんどうまさのぶ)さんが
ボイラ導入の背景を以下のように語ってくださいました。

「木材チップの場合、重油の変動にも振り回されないし、
地域の業者からチップを購入するので、地域内循環が可能になります」

こうして地元の木材と海水、海藻を使ってできた塩は、
まさに対馬の海と森が育てた味。

塩を口に含んでも、しょっぱさをほとんど感じずに
むしろ甘みを感じるほどです。

世界中の塩を知る白木さんに世界の塩との違いを聞いてみました。

「岩塩は塩自体の味が主張するので、お肉などに合います。
一方、海水からできる塩は、食材のうまみを活かしてくれる。
おにぎり、天ぷら、野菜などに合いますね。
海水はそもそも体の蘇生成分に似ているから、
体に入れても抵抗を感じないと思います。
体にスーッと溶けるように吸収されていくはずです」

同じ塩でも、海水からなのか岩塩なのか、はたまた塩湖水なのか、
海藻を入れるのかなどの原料によっても、
釜炊きなのか天日干しなのかなどの製法によっても、味が変わってきます。

その日のメニューや好みによって塩を使い分ける。
それだけで普段の食卓が豊かになるかもしれませんね。

※対馬で作られている「浜御塩(はまみしお)藻塩」は、
Found MUJI取り扱い店舗でお買い求めいただけます

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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