MUJIキャラバン

原木われ椎茸

2013年12月04日

1980年、無印良品が生まれた年に発売された、
「こうしん われ椎茸(しいたけ)」。

生のものと比べ、旨みも風味も豊かで、高額だった干ししいたけを、
不ぞろいや割れたものも一緒に販売することで、市場に安価で流通させたのです。

「大きさはいろいろ、割れもありますが、風味は変わりません」

パッケージに印刷されたそのコピーには、
「訳あって安い」という無印良品の理念が込められていました。

それから三十余年。

市場環境は変化し、原木栽培が主流だったしいたけは、
菌床栽培(おが粉等をブロック状に固めたものに種菌を接種し、
きのこを栽培する方法)が、全体の約85%を占めるほどになりました。

現代において原木しいたけはもはや希少な存在ですが、
今でも原木でしかしいたけを栽培していないという地域があります。

長崎県の対馬(つしま)です。

海からこんもりと山が突き出したような地形の対馬には、
コナラやアベマキといった落葉樹が豊富にありました。

その風倒木などに、大陸から飛来する胞子が付着したのが、
対馬の原木しいたけのはじまりといわれています。

「対馬でも一時期、しいたけの菌床栽培がされたこともありました。
ただ、やっぱり原木栽培のものには敵いませんでした。
以来、誰が作ったしいたけでも、対馬産のものはおいしいと思ってもらえるよう、
原木栽培一筋でがんばり続けていますよ」

そう話すのは、とても朗らかな笑顔が印象的な永尾賢一さん。
対馬市で10名ほどしか認定されていない、原木しいたけマイスターの一人です。

永尾さんのほだ場(原木しいたけの栽培場所)を訪ねると、
そこには、見渡す限りに立てかけられた原木の光景がありました。

主に使われている原木は、アベマキやクヌギ。
いわゆる"ドングリ"ができるような木が、栽培に用いられています。

この原木に、等間隔で無数に打ちつけられているのが、
しいたけの菌です。

この菌が、原木に蓄えられたいっぱいの養分を吸収しながら、
夏場を越えて、秋から冬にかけてしいたけが生えてくるのです。

「おいしいしいたけが育つ環境は、人間にとっても気持ち良い環境なんです。
夏場は風が通って涼しく、冬場はぬくい(暖かい)。
いかに子育てに最適な環境を選ぶか、これが大事なんです」

そう話す永尾さんについて、今度は森の中にあるほだ場を訪ねると、

そこは木漏れ日が注ぎ込む、気持ちの良い環境です。

「むかで伏せ」と呼ばれる絶妙な組み方で並べられているのも、
できる限り陽の光が当たるようにとの工夫からでした。

それでも毎年、思うような天候にならないのが自然。
冬の寒さで、しいたけの成長が遅くなったときには、
袋がけで対策していたこともあるそうです。

「そうすると、"余計なことはすんな"としいたけから言われるんですよ。
現に、袋がけして育てたしいたけは、食感がいまいち。
やっぱり、自然のままに育ったしいたけが一番、おいしいんですよね」

こうして自然の力で育った原木しいたけは、
香り高く、身が締まっていて、肉厚です。

ただ、なかには厳しい自然環境の中で
割れたり、形がいびつに育ったものも。

「割れていても風味は一緒ですよ。
干すことによって、さらに旨みも凝縮されているんです。
良かったら食べてみませんか」

水に浸して戻した干ししいたけを、
永尾さんがバターと塩コショウでササッと調理してくださいました。

お言葉に甘えて、一口食べさせていただくと、
その歯ごたえと、口いっぱいに広がる風味に驚愕。

浸しておいた水には、しいたけの旨み成分、グアニル酸が溶け込み、
簡単に出汁もとれていました。

「おいしいでしょう。森を食べているようなものですから。
良い食品は、毎日食べていても飽きないのですよ」

満面の笑みで話す永尾さんの食卓では、
煮物から、炒め物、お味噌汁など、様々な料理にしいたけが使われるそう。

なんともうらやましい限りですが、
思えばしいたけはパスタやハンバーグソースなど、
和食のみならず洋食などとの相性も良いですよね。

干ししいたけなら、戻し水で簡単に出汁がとれてしまうのも嬉しいところ。
ちなみに、干ししいたけは急いで戻すのではなく、
冷水でゆっくりと戻すのがよいといいます。

我が家の食卓も早速、しいたけのおかげで、旨みも風味も豊かになりました。

そんな永尾さんをはじめとした、
対馬の生産者が丹精込めてつくった原木しいたけが、
12月7日(土)から、 無印良品 MUJIキャナルシティ博多で始まる
「Found MUJI九州」で、限定販売される予定です。

12月7日(土)14:00〜は、しいたけマイスター永尾さんのトーク&試食イベントも。
(参加費無料)

無印良品としては1980年以来、三十余年ぶりに「われ椎茸」が復活です。
しかも、価格は当時と同じ568円。

原木しいたけの風味を手軽にお試しいただく絶好の機会です。
近くにお越しの際には、ぜひお立ち寄りください♪

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

最新の記事一覧

カテゴリー