大地の芸術祭
新潟県南端の十日町(とおかまち)市と津南(つなん)町からなる
「越後妻有(えちごつまり)」地域は面積760㎢で
東京23区がすっぽりと入る大きさです。
今年の冬には全国一の積雪を記録したという豪雪地帯ですが、
ここの土壌では"魚沼産コシヒカリ"をはじめ、
どんな作物でも育つといわれるほど、豊かな自然が今でも残っています。
この美しい里山を舞台に、
2000年から3年に1度開催されているのが
「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」。
地域にあるものを活かしながら、"場に根ざした作品"を
アーティストと地元の人とが恊働して作り上げていくこの芸術祭は
今年で5回目の開催となります。
期間中は、越後妻有の200の集落に300点以上のアート作品が展示されますが、
期間が終わっても約200点はそのまま里山に常設されています。
今回は、事務局の大木さんにご案内いただき、
いくつかのスポットを見て回りました。
これはフィンランドの建築家達が手がけた「ポチョムキン」という作品。
もともと産業廃棄物の不法投棄場所になってしまっていた河川横の場所に
鉄やガラス、廃材を使って表現された空間です。
タイヤでできたブランコに揺られながら川を眺める。
ただそれだけのことですが、
小鳥のさえずりと水の音を聞きながら過ごすその時間は
とても贅沢なものに思えました。
2003年に作られた作品ですが、
今では地元の人のデートスポットになっているそうです。
他にも「たくさんの失われた窓のために」や
「再構築」といった作品が
広大な大地の上に突如として現れます。
これらの作品は、アーティストが地元を視察したうえで
この地に合わせて作り上げたものであり、
それぞれの作品にはメッセージが込められています。
例えば、上記の「たくさんの失われた窓のために」という作品は、
越後妻有を来訪したアーティスト自身が、この景色に圧倒され、
窓から見えるであろう越後妻有の風景をもう一度発見しよう!
と作り出したものだそう。
確かに、もしかするとこの場所にもかつては家があり、
窓から誰かがこの風景を見ていたのかもしれません。
そして、同じ窓からの風景でも季節や天候、
その日の気分によって見えるものが違ったんだろうな
そんなことを感じました。
トリエンナーレはこの越後妻有以外の
横浜や福岡などの地域でも行われていますが、
越後妻有のすごいところはやはりその規模と、
地域住民と一体となって進めているところ。
いったいどのようにして、作り上げていったのでしょうか?
「初めはすごく大変でした。
地元のおじいさんやおばあさんに"アート"の話をしても伝わらない。
ディレクターは1000回以上ここに足を運びました。
あとは、"こへび隊"の存在が大きいと思います」
と大木さん。
"こへび隊"とは、全国から集まった「大地の芸術祭」のサポーターで、
農作業や雪掘りなど地元の人のお手伝いをはじめ、
作品制作や来訪客の案内までしている人たちのことだそうです。
彼らが地域のことを学んでいき、地域のファンになっていったことで
地元の人たちとの交流が深まったといいます。
大木さんももともとは学生時代に、こへび隊として関わり、
今こうして事務局として働いているんだそう。
外から地域に入って活動するポイントを伺うと、
「当たり前のことですが、元気よく挨拶をする。
『使わせてもらっている』という気持ちを忘れないことでしょうか」
と教えてくれました。
「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012」は、
2012年7月29日(日)〜9月17(月・祝)まで
越後妻有地域で開催されます。
そして、無印良品津南キャンプ場からも
期間中の土日に、シャトルバスが出る予定!
キャンプ場を拠点にアウトドアを楽しみながら、
「大地の芸術祭」でアートに触れてみるのもいいかもしれませんね。
シャトルバスでは、地元出身のガイドが
地域の自然やくらしについて説明してくれるそう。
アートを体感しながら、地元のことも知れるいいチャンスです。
これまでのキャラバンでも様々な地域づくりの現場を見てきましたが、
地元の人とそれ以外の地域の人を結びつけながら、
今あるものを活かし、長期にわたって活動されている好事例を
越後妻有に見ることができました。