南魚沼産コシヒカリ
新潟県南魚沼市。
言わずと知れた、日本有数の米どころです。
日本穀物検定協会の米食味ランキングでは、
魚沼産コシヒカリが25年連続「特A」を獲得するほど、
品質には定評があります。
そのおいしさの秘訣はどこにあるのでしょうか?
黄金色に輝く稲穂が眩しい10月半ば、南魚沼市を訪ねました。
「四季がはっきりしているので、冬は豪雪地帯ですよ。
その豊富な雪解け水が、おいしいお米の鍵なんです」
清々しい笑顔でそう話すのは
魚沼伝習館の理事長、坂本恭一さんです。
今の季節は想像するのも難しかったのですが、
この界隈は冬には数メートルの積雪が当たり前なんだそう。
この冷たい雪解け水は、土砂をつたって、
山のミネラルを田んぼにもたらします。
そして、昼夜の寒暖差。
昼間光合成で作られたデンプンは、夜間穂に蓄えられるのですが、
夜も気温が高いとデンプンを消耗し、食味が落ちてしまうといいます。
実際に訪れた10月半ばも、日中は陽射しが暑く感じられましたが、
夜は一気に冷え込み、布団1枚では寒さを感じるほどでした。
「"豊富な雪解け水"と"昼夜の寒暖差"。
これこそがコシヒカリの最適生育条件に適っているんです」
坂本さんはおいしさの秘訣を、そう語ります。
この表情豊かな自然に魅了された坂本さんは、今から18年前、
50歳の時に、東京から南魚沼市へ移住されました。
魚沼の自然と伝統・文化を、後世まで引き継いでいきたい。
そう考えた坂本さんは、様々な学習体験を実践する場として、
「NPO法人 魚沼伝習館」を発足。
しかし、活動を通じて地域の魅力を発信するも、
坂本さんが直面したのは、高齢化によって手放され、
荒れ果てていく田畑の姿でした。
「いくら魚沼産のブランドがあっても、
実態は農業だけで食べていくことは難しいんです。
食べていけなきゃ、後継ぎも生まれませんから」
実際作っている魚沼産のお米の総量よりも、市場には多くの魚沼産が出回っているそう。
つまりそれだけブレンドされてしまっているため、
本来の味がきちんと伝わっていない可能性があります。
また、消費者に届くまでに、様々な仲介業者を介する食品業界において、
末端の農家さんの収入は微々たるものなんだそう。
一生懸命、おいしいお米を作っても
報われない農家さんの実情に奮起した坂本さんは、
独自の販路開拓に立ち上がります。
農家さんと直接契約し、徹底した栽培上のデータを管理。
ホテル、飲食店、高級スーパーなど、真に価値を理解してくれる先にしぼって、
魚沼産ではなく、さらにエリアを限定した南魚沼産として直接販売しています。
また、積極的に移住者の受け入れも支援し、
耕作放棄地、休耕田の復活にも余念がありません。
その際に徹底しているのが、
農業に携わる移住者に、経営計画を描かせること。
そうすることによって、自走していくためには、
どれだけの品数・数量が必要なのか、どんな販路が必要なのかなどを
理解した上で、農業に取り組んでもらえるようになると話します。
「お米のみならず、魚沼には脈々と引き継がれてきている食文化がたくさんあります。
例えば、裏山に行けば、たくさんの山菜が生えていますし、
これらの資源を活かしながら、生計を立てていくことは可能だと思っているんです」
日本の食文化を伝えていきたいと話す坂本さんは、
こうも付け加えられました。
「多様化する社会において、食文化を選択するのも自由ですが、
まずはその実態を知ってほしい。
そして、若い人が専業でも農業をやっていけるよう
レールを敷いてあげることが、
私たち世代の仕事だと思っています」
南魚沼産コシヒカリの新米は、
モチモチとしていて風味が良く、冷めてもおいしく食べられます。
「酒のつまみにもなるお米!」と地元の人に太鼓判の味は、
11月度のFound MUJI Marketでもお買い求めいただけます。