長期熟成麦味噌
おふくろの味の代表格ともいえる「みそ汁」。
出汁、味噌に加え、具材も各家庭によって千差万別であるため、そう称されています。
このキャラバンでは各地の味噌に出会ってきましたが、
毎回新たな発見があるのが、味噌の面白いところ。
実は、味噌とルーツを同じくするといわれる醤油には
JAS(農林水産省)による規格が設定されているのに、味噌には設定されていません。
というのも、味噌はあまりにも種類が多く、
グループに分けて規格を規定するのが難しいということと、
味噌の多くが加熱殺菌をしない、いわば"生き物"であることが主な理由とか。
そんな数ある味噌のなかで、今回は大分県臼杵市で製造されている、
「蔵づくり長期熟成 麦味噌」の現場にお邪魔してきました。
麦味噌は、かつては農家の自家用として造られたものが多く、
別名「田舎味噌」とも呼ばれており、全国に分布しています。
なかでも、私たちが全国を回った感覚からすると、
九州地方には麦味噌が多いイメージがあり、
そして、"麦味噌=甘い"という印象が脳裏に刻まれています。
しかし、なぜ九州は麦味噌が多いのでしょうか?
そしてまた、なぜ麦味噌は甘いのでしょうか?
「この辺りでは、もともとお米づくりの裏作として麦を育てていたから
麦味噌を造るようになったのだと思います。
ちなみに麦味噌が甘いのは麹歩合が高いからですよ」
そう教えてくださったのは、製造元の二豊味噌協業組合の専務理事、
渡邊郁(かおる)さんです。
「パッケージの裏を見てみてください。
原材料名のところに、原料の多い順に表示がされていますが、
麦味噌の場合、大豆よりも麦が先に書いてあるでしょ」
渡邊さんいわく、米味噌の場合、大豆10に対して米麹の分量が7〜8のところ、
麦味噌の場合、大豆10に対して麦麹の分量がおよそ25。
米や麦に含まれるデンプンが麹によって糖化するので、
麹に使う原料(米や麦)の量が多ければ、その分甘くなるということなのです。
さらに、一般的に米味噌の塩分が約12%なのに対して、
麦味噌の塩分は約10.5%といわれており、
麦味噌は塩分が低い分、みそ汁に入れる味噌の量が多くなり、
その分甘くなるんだとか。
では、同じ麦味噌のなかでの味の違いは何でしょう?
「『蔵づくり長期熟成 麦味噌』には、大分県産の裸麦を使用しています。
裸麦は殻がない大麦の一種なのですが、これをさらに25%削って使っています。
お酒でいう吟醸ですよね」
写真下左が削る前の裸麦で、右が削った後の裸麦。
削ることで、体積に対して麹がすみ着く表面積が大きくなるため、
麹の働きがより活発になるそう。
また、味噌になった時のくすみをなくすことも目的だといいます。
「大豆の表面の皮も取ってから使っています。
仕上がりが鮮やかな色になるのと、のどごしが滑らかになりますからね」
続いて、こだわりの原料から実際どのように味噌が造られているかを
工場長の上野康成さんにご案内いただきました。
「味噌の品質は7割が麹づくりによって決まるといっても過言ではありません。
ある程度の量を仕込むため、機械の力を借りていますが、
良い麹が仕上がるタイミングを見極めるのは、職人にしかできません」
また、良い麹づくりのポイントは適度な水分を裸麦に吸わせること。
天候など日によって、水に浸ける時間は異なるといいます。
「私たちは味噌を造っているとは思っていません。
麹菌などの菌が主役ですから、その支援をしているだけなんです」
ちなみに、味噌の味は熟成期間によっても異なります。
一般的な麦味噌は1.5〜2ヵ月熟成させるところ、
「蔵づくり長期熟成 麦味噌」の熟成期間は6ヵ月。
味噌づくりには、麹菌の他に酵母菌の活躍も外せないというのですが、
熟成期間が長いと、酵母菌が麹菌の造った糖分を餌にするため、
甘みが抑えられ、辛口の味噌ができるそう。
「口あたりがとてもまろやかな麦味噌です。
『蔵づくり長期熟成 麦味噌』は地元向けのつもりでおりましたが、
おいしいと感じた味がその人にとってのおいしい味。
ご自身に合う味を見つけてもらいたいですね」
最後に、「蔵づくり長期熟成 麦味噌」の販売元である、
二反田醤油店の二反田新一さんがそうおっしゃいました。
知れば知るほど、奥が深い味噌の世界。
パッケージ裏の原料や熟成期間などを意識して、
自分好みの味噌を探してみてはいかがでしょうか?
毎日のみそ汁がもっと楽しみになるかもしれません。
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