有機生活マーケット「いち」
岡山生まれで、岡山市でヘアサロン「ヴィハーラ」を経営する、
高橋真一さん。
高橋さんは10年ほど前から、
サロンで使っているパーマ液などが人体や環境へ及ぼす悪影響を知り、
オーガニックなサロンづくりを目指す一方で、
「多くの人に循環可能な環境づくりの必要性を知ってもらいたい」
と「T.T.T.PROJECT」を主宰。
「T.T.T.PROJECT」の3つのTは
「ツナガリ」「ツナゲル」「ツナガル」の頭文字を表します。
地球温暖化、環境汚染、有害化学物質などの環境問題の現状を
いろんなツナガリから改めて知ってもらい、
自分たちのできることからアクションを起こすことで、みんなで今を変えていく。
周囲と次世代にツナゲル行動が、未来ヘツナガルきっかけになれば
と、立ち上げたプロジェクトだそう。
本業の美容師の傍ら、ファッションやアート、デザインによる様々な展示や
イベントの企画などを運営してきました。
どうせやるなら岡山で同じ想いを持って活動している人ともっとツナガリたい!
そう思っていた時でした。
あの未曾有の大災害が起こったのです。
3.11をきっかけに、活動の方向性を模索していた高橋さんは、
2人の仲間と新たなスタートを切ることに。
仲間の1人が、岡山生まれで、
現在岡山市でNPO法人「タブララサ」の代表を努める、河上直美さん。
「タブララサ」は、ラテン語で「白紙の状態」を表し、
エコの要素を取り入れ、おしゃれに、楽しく、
何にもとらわれない真っ白な心で街づくりのアイデアを実現していく
20~30代のグループだそう。
もともと、素敵な場所なのに人通りが少ない場所の
魅力発信のためにイベントを行っていた彼ら。
イベントに出店をすると必ずゴミが出ることを解決できないかと、
"リユース食器"の普及、ゴミ分別など、様々な方法を模索し、
イベントの開催場所からゴミを減らす提案のほか、様々な活動をしています。
高橋さんとは、5~6年前に知り合い、活動の構想を話し合ってきました。
そして、もう1人が、大阪生まれで、東京を拠点に
クリエイティブディレクターとして活動していた、木内賢さん。
震災後、東京では"タブー"が増えたと木内さんは話します。
クリエイティブな世界を実現するためには、
本音と建前が入り交じった東京では正直に仕事ができない
と西日本に移住を決意。
昔住んでいた徳島を目指すも、
電車を乗り換えた岡山で、友人に会おうとたまたま降り立ち、
その友人経由で高橋さんと知り合い、そのまま今に至るそうです。
さて、「ストレスのない心地よい都市生活を追求したい」
という共通の目指すべき世界を持つ3人は、すぐに意気投合。
準備をしていた構想を実現へと進めることにしました。
2011年11月から、これまでに4回、
「有機生活マーケット『いち』」を開催しています。
「いち」には、有機栽培、無農薬、減農薬、地産地消などこだわりの食材や、
それらを使った料理、エコなライフスタイルを提案する雑貨などを扱う
約40店が並びます。
出店者は人のツナガリで、高橋さんらの考えに共感する人たち、
「いち」を知る人たちが集まっているそう。
「『いち』を開催する前に、定期的に『茶会』を設けていて、
そこで価値観の共有がなされているんだと思います」
と高橋さん。
すると、河上さんが
「これは賢さんのアイデアで始まったことなんですが、
東京のParty文化を取り入れようって。
岡山で活動する私たちだけじゃ生まれなかった企画だと思います」
と重ね、続いて木内さんが
「その場を機能的にはしたくなくて。
説明会ではなく、雑談から始まる何かがあると思っていて。
生のエネルギーは、人間の興味関心と仲よし度から生まれると思うんですよね」
と加えます。
見事な3人の連携っぷりがうかがえました。
実際に「茶会」から、生産者さんと野菜を仕入れるカフェがツナガル事例も
生まれているそうです。
3人は、「いち」は町のコーディネーター的な役割を担っていると話します。
岡山は昔から災害が少なく"晴れの国、岡山"といわれるほど天気も良いので
そんなに助け合わなくても生活できてこられたんだとか。
そのため、横のツナガリがこれまで希薄だったそう。
「僕らが考えている"有機生活"というのは、オーガニックのモノを選ぶ
ということより、人と人とが有機的なツナガリを築いていくということ。
代替できるモノは代替しつつ、
出店者同士がコラボをしながら、持続可能な暮らしができる
新しい街を作っていけたらいいと思っています」
「有機生活マーケット『いち』」は来年度4月から定期開催するそうです。
「岡山でこれができたら他の県でもできるでしょ
っていう実例を見せたくて。
みんなが真似していって、自分たちの街の経済圏を自分たちで作っていく状態が
できたらいいと思いますね」
出身や職業、キャラクターの異なる3人がしっかりとツナガリ、
岡山の人を巻き込みながら新しい街づくりの形を示していっています。