MUJIキャラバン

島人ぬ宝

2012年10月24日

「この島の素材を活かして、
島のブランドを作っていきたいと思っています」

そう優しく語ってくれたのは、
(株)オキネシア代表の金城幸隆(きんじょうゆきたか)さん。
"かりゆしウェア"がよく似合う、沖縄生まれ沖縄育ちの社長です。

"かりゆしウェア"って、てっきり観光業にかかわる人たちだけが
着ているものかと思っていましたが、
ワイシャツとネクタイに代わるホワイトカラーの服装として
沖縄の夏に、広く定着しているものだそうです。

確かに那覇市内を走る都市モノレールの"ゆいレール"内でも
かりゆしウェアを着たビジネスマンを多く見かけました。
見ている側もわくわく明るい気分になる☆
服装ひとつで、仕事をする感覚もなんだか変わってきそうですよね♪

さて、話がそれましたが、
金城さんは32歳で「世界を見たい!」と仕事を休職し、
世界一周の旅へと出ました。

未知なる世界を知ると同時に、
これまで見えていなかった郷土「沖縄」に対して
想いを馳せるようになったといいます。

「旅で出会った他国の人は皆、
自分の国の文化や言葉を大事にしていました。
海外で自己紹介をする時に"自分のルーツをきちんと話せるか"
は、国際人として最低限のことだと思うようになったんです」

そうして「モノづくりを通してアイデンティティの種蒔きをしたい」
と36歳で独立。

沖縄の、良い商品・喜ばれる商品・誇れる商品を
ひとつひとつ丁寧に仕立てて、
息の長い県産品に育てることが、ウチナーンチュ(沖縄県民)の
アイデンティティ、つまりは「沖縄を大切に思う心」に
寄与すると考えたのです。

その後、金城さんによって生み出されてきたのは、
食、雑貨、化粧品…と幅広いジャンルの商品です。

沖縄でお茶請け菓子の定番として、よく出される「黒糖」。

さとうきびを搾り、煮つめて固めたものですが、
現在、純国産の黒糖は、沖縄の7つの離島でしか、
生産されていないそう。

オキネシアのひとくち生黒糖「ざわわ」は、
西表島で作られており、7つの生産工場の中で
唯一、山からの天然水を使用しています。

その年のさとうきびの収穫によって生産量が変わる限定商品で、
毎年味が変わるといいます。

口に含むと、じわじわっと黒糖の素朴な甘さが広がります。
沖縄出身ではない私にとっても、なんだかほっとする
懐かしい味なので、沖縄出身者にとっては尚更そうなのかもしれません。

他にも、沖縄の黒糖や塩、島唐辛子などの沖縄産原料を使った
ピーナッツ菓子や飴などがありますが、
それらのネーミングにも沖縄の要素が含まれていました。

例えば、マカダミアナッツ菓子の「ナンチチ」は
琉球古来の方言で「おこげ」を表し、
ピーナッツ菓子の「ぴりんぱらん」は
1970年代の沖縄で流行したコトバで「おしゃべり」という意味。

「ほとんど死語になりつつあるような沖縄特有のコトバでも、
商品名として表舞台に引き出すことで再び輝きを放つのではないか」
という金城さんの想いが込められています。

「これを飲んでみてください」

出していただいたのは、とてもさっぱりとしていて、
控えめな甘さのみかんジュース。

「沖縄の在来みかんで、"カーブチー"っていうものなんです」

"カーブチー"は沖縄北部のやんばる地方で
ちょうどこの時期(10~11月上旬)に収穫できるみかんです。

昔はちょうど運動会シーズンに穫れることから
「運動会みかん」として、広く親しまれていたそうですが、
カーブチーの「カー」は 沖縄の方言で"皮"、
「ブチー」は"分厚い"を意味していて、
名前のように皮が厚くて種が多いので、加工には不向きなことから生産が減少。

沖縄で生産されるカンキツ類全体の1割りにも満たないため、
地元のスーパーなどでもなかなかお目にかかれない、
マイナーみかんだそうです。

金城さんはこの"カーブチー"の復活にも取り組み、
皮を手で剥いて遠心分離させて作った、
カーブチー果汁100%のジュースが出来上がりました。

「私自身が好きなみかんだったので、埋もれていくには惜しい…
と思ったんですね」

金城さんは"カーブチー"の新しい価値を見いだすべく、研究を続けたところ、
カーブチーは在来種で強いため、
「無農薬で放っておいても実がなる」ということが分かりました。

さらに豊かな皮の香りにヒントを得て、
その特性を最大限活かしたアロマオイル「星涼み」と
香水「UTAKI」の開発に成功。

シトラスタイプの香水のほとんどに、
柑橘系の人工香料が使用されているそうですが、
この「UTAKI」は100%天然のカーブチー香料で調香されたものです。

本来、香水はつけてからの時間によって
香りが変化していくのを楽しむものですが、
それが人工香料だと一定の香りで表情がつかないんだとか。

沖縄の素材を使って、香水の本場・フランスの調香と製造技術が
融合してできた「UTAKI」は、移ろいゆく香りを表現できたといいます。

「島の中に散在する有形無形の"大切なもの"を、
私たち自らの努力で"誇り"に変えて守り続けてゆくことこそが
『島人ぬ宝』のような気がするんです」

金城さんのモノづくりには、生まれ育った沖縄への感謝の想いが
たくさん詰まっていました。

※オキネシアの一部商品(「ざわわ」「ナンチチ」「ぴりんぱらん」
「琉球かつお豆」「童玉」)はFoundMUJIを扱う無印良品で
お買い求めいただけます。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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