MUJIキャラバン

おいしい海苔

2012年10月02日

お寿司やおにぎり、磯辺巻、ラーメンなど、
日本の食卓に欠かせない食材の一つが海苔。

世界的な寿司ブームに後押しされ、
今や欧米でも海苔が食される昨今ですが、
国産海苔の生産量、消費量ともに日本一なのが、佐賀県です。

佐賀県、福岡県、熊本県3県合わせると、
実に国産海苔の約40%が有明海で作られているものだそうです。

ただ、同じ海で同じように作ったとしても、
作り手によって味は変わるもの。

佐賀市で地元でも知る人ぞ知る、おいしい海苔があると聞いて、
賞味してまいりました。

一見、普通の海苔のように見えますが…

食べてみてその味にビックリ!

口の中で溶けるように磯の香りが広がり、甘さの後には少々の塩気も。
一瞬、味付け海苔と勘違いするほど、しっかりとした味わいです。

そして、この海苔で作られた無添加の佃煮。

おいしくないわけがありません。
ついついご飯を食べすぎてしまいそうです。

さらには、この海苔に佐賀産のジャージー牛のミルクで作った
「焼のりアイス」なんていうのもありました!

ミルクの甘みと海苔の風味が
とても上品な味わいを演出していました。

「海苔ってご飯の他にも意外と合うものが多いんですよね。
いろいろな食べ方を訴求して、美味しい佐賀海苔を知ってもらいたいです」

こう話すのは、佐賀海苔を手がける、
「合同会社 佐賀市漁村女性の会」の代表・古川由紀子さん(写真左)。

良質な佐賀の有明海産の海苔をブランド化しようと、
平成18年に漁業協同組合から独立し、会社を起ち上げました。

「作り手によって海苔の種類や質が変わるのに、
それをすべてまとめて同様の金額で出荷するのはおかしい
と常々思っていたんです」

古川さんがそう話される背景には、
海苔の養殖過程における差異がありました。

海苔の養殖は、「海の農業」と表現できる通り、
別の場所で育てた海苔種(苗)を海に沈めて育てていきます。

海苔種専門業者から仕入れて種付けを行うのが一般的ですが、
古川さんたちが扱う海苔の生産者は
自分たちで海苔種を育てるところから行うそうです。

「海苔種は光合成で成長していくので、
天気が悪い時には電気をつけたり、逆に天気がいい時には遮光を調節したりと
大変な作業なんですが、人間の子と同じで赤ちゃんのうちの育て方で
その子(海苔)の性格も決まると思うんです」

また、昔はほとんどの生産者が、干出(かんしゅつ)と呼ばれる、
海に浸していた海苔を太陽光に当てることによって、病気を予防していたのが、
海苔は海に浸していないと成長しないため、
干出の仕方に違いが生まれるようになってしまいました。

そして、生まれたのが「酸処理」という手法。

海に浸かっている海苔網を一度、
リンゴ酸などの有機弱酸に浸けることによって、病気の予防をするのだそうです。

「決められた酸を使った処理は決して悪いことではありませんが、
一部モラルのない人たちがいるのも事実。
海苔本来の味を引き出すには、やっぱり干出です」

手間のかかる分、多くの生産量も望めないようですが、
古川さんたちグループの漁師さんたちは、酸処理に頼らずしっかりと干出を行っており、
手塩にかけて育ててあげることが、良質な海苔をつくる秘訣だといいます。

それからこうも話してくださいました。

「私たちが母親だからできることなのかもしれません。
未来の子供たちへの食の安全を考えたら、
手間でもこの作り方を選択しました」

こうして作られた海苔は、
生産者と舟の名前を明記して出荷されています。

名前を出すことによって、
中途半端な海苔はつくれないという気持ちが、
生産者側にも生まれるようです。

人間も海苔もすくすく育つには、
母親(生産者)の愛情が大事だと感じました。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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