coccori(コッコリ)
先日のブログでご紹介した「ファブリカ村」を訪れた際、
一際、目を奪われたカラフルな展示品の数々。
一つひとつから醸し出される温かみから、
きっとそれが人の手によってゆっくりと作られたものであることを感じました。
その織物の名は「coccori(コッコリ)」。
実はこれらは、滋賀県の福祉作業所で働く
障がい者の方たちによって作られたものでした。
「素敵でしょ? でも、しばらく作業所の倉庫に眠っていたんですよ」
そう話すのは、Team coccori事業代表の市田恭子さん。
作業所の中間支援を行う (社)滋賀県社会就労事業振興センターで、
障がい者IT利用促進事業コーディネーターとして働く市田さんは、
これらの織物が、作業所の倉庫に保管されているのを発見しました。
繊維関係の工場などから、不要品として調達してきた糸を使って、
障がい者の方たちが一生懸命、はた織り機を使って織ったものでしたが、
売るあてもなく、そのままの状態で眠っていたのです。
「これはかわいい! 倉庫に眠らせておくなんてもったいない。
なんとかできないか? って考えました」
こうして市田さんは、滋賀県内で活躍するデザイナー6名とともに
「Team coccori」を結成。
"作りっぱなしの商品"から"買ってもらえる商品"にするために、
様々な商品を企画していきました。
かけるだけで映える敷物や首ストラップ、
鍋包み(写真右)に、現在企画中のペンケース(写真左)等々。
ストールはこの通り、とっても素敵♪
同じものが二つとない独創的な色合いが魅力的です。
「この事業で実現したいことは、何よりも障がい者の工賃向上なんです」
市田さんいわく、作業所で働く障がい者の賃金は、
全国的にみて月平均1万3000円といったところ。
障がい者年金と合わせてもとても自立できる金額とはいえません。
重度の障がい者がきちんとした社会保障を受けられるようにするためにも、
元気な障がい者が、税金を納められるぐらいの稼ぎを得られるようにする。
市田さんは活動目的をそう話します。
Team coccoriでは、他にもこんな逸品も展開していました。
「湖のくに 生チーズケーキ」
何やら入っているのはおちょこのようで、
一つひとつ書かれている文字が違います。
そう、これらは滋賀県内の琵琶湖周辺にある6つの酒蔵の、
風味の異なる"酒粕"を使ったチーズケーキなんです。
酒粕とは、お酒を作る時にできる米麹の搾りかすで、
近年、栄養素に富んだ食品として価値が見直されており、
酒蔵によっては"しずく"と呼んでいるほどの代物。
これまでも甘酒や漬物などにも利用されてきましたが、
とても使いきれる量ではなく、その使い道に頭を悩ます酒蔵も多かったそう。
それが、県内の作業所で働く障がい者の手によって、
生チーズケーキへと生まれ変わったのです。
そのお味はとても芳醇で、
お酒と同様に、酒蔵によって風味が見事に異なりました!
これを、同じく作業所で作られた「酒粕ビスコッティ」に付けると、
格別な味わい。
スイーツとしてはもちろんのこと、
ワインのつまみにもイケてしまいそうです!
日本酒の酒粕が、ワインに合うなんてまた不思議ですね。
「障がいのある方たちも、基本的欲求は健常者と一緒。
認められて、その対価をもらうとうれしいんです。
これらの事業によって、明らかに生活に張りが出てきた方もいるんですよ」
coccoriによって明らかに変化が生まれている滋賀県の福祉事業。
ただ、そこから生み出される商品は、
作り手が障がい者か健常者かということではなく、
素直に感動を受けるものばかりでした。