MUJIキャラバン

"民藝の器"を生み出す、湯町窯

2012年11月22日

流れるような直線と波線が織りなす文様に、

くまのプーさんのはちみつ壺を連想させる、黄色い釉薬が印象深い器たち。
素朴だけれど、どこかモダンで手づくりの温かさを感じます。

これらは、松江市玉湯町の玉造温泉駅から程近い住宅街にある、
「湯町窯」で作られており、
その地で育まれてきた歴史を踏襲した器たちです。

江戸時代に松江藩の御用窯として始まった"布志名焼(ふじなやき)"のひとつで、
大名茶人でもあった第7代藩主の松平不昧(ふまい)公の好みを反映した
茶器を中心に発展してきた歴史を持ちます。

大正11(1922)年に開窯した湯町窯では、当時、
火鉢を中心に作っていたといいます。
各家庭で会合があり、手を温めたり、灰皿代わりに使ったりと、
1軒で10~20個も火鉢が使われていたんだとか。

昭和に入り、民藝運動(毎日使う実用雑器にこそ美が必要という考えから、
それらを生み出す名もなき職人たちの手仕事に光を当て、それを広めようとした運動)
にいち早く参加し、その創始者である、柳宗悦やバーナード・リーチ、河井寛次郎らから
直接指導を受ける機会に恵まれ、洋食器が多く作られるようになりました。

湯町窯の3代目・福間琇士さんは、当時、2代目である父親の貴士さんの後ろから
その様子を見ていたそうです。

飾られていたこの写真は、バーナード・リーチ氏(左)が作る様子を見守る、
湯町窯・2代目の福間貴士さん(手前)と柳宗悦氏(右奥)。

そして、これはバーナード・リーチが1953年に湯町窯で作ったお皿。

これまで各地で見てきた焼き物の裏には、
必ずといっていいほど、民藝運動の足跡があり、
ここに来て、その実施者と直接かかわりを持った方にお話を伺うことができ、
なんだか感無量でした。

湯町窯では、地元産出の粘土や釉薬を使っていますが、
美しい黄色の釉薬が、英国のガレナ釉(鉛の硫化物)に似ていたこともあり、
バーナード・リーチがとりわけ興味を持ったのだそうです。

「いつも初心に返って、リーチ先生、ご先祖様、諸先生のおかげで
やらせてもらっていることを忘れずに作っています」

そう謙虚に話される、3代目の福間さんに、
バーナード・リーチ直伝の技を見せていただくことができました。

粘土と水を混合した泥漿(でいしょう)釉で化粧掛を施し、
乾かないうちにすぐ別の釉薬が入ったスポイトで模様を描いていきます。
「スリップウェア」と呼ばれる手法です。

その作業の早いこと!
スルスルと描かれ、あっという間に終わってしまいました。
ちなみに、焼き上がった器が、冒頭の写真にある黒いお皿です。

続いて、実演してくださったのがコーヒーカップの取っ手付け。
粘土を細長く伸ばし、コーヒーカップの側面上部に付けると、
指で生地を伸ばしながら、下部になじませていきます。

「取っ手を取って付けるのではなく、木に枝が生えるように付けるようにと、
リーチ先生から教わりました。
長さと厚さをつかむまでに随分と苦労しましたが、指一本が入って、
触れると熱い側面に指がくっつかないような持ちやすい仕立てになっています」

通常、型で取っ手の形を作ってから付ける手法が多いそうですが、
手で生地を伸ばして付ける方が圧倒的に速いといいます。

福間さんがニコニコ笑顔でこう続けました。

「ひとつ自慢してもいいですか?
この手法で1時間に150個取っ手を付けたことがありますよ。
当時それだけ買っていただけたので、上手になったんですけどね」

どこまでも謙虚な福間さんが、「これもうちの代表的な器です」
とご紹介くださったのが、このエッグベーカー。

ふっくらとしたフォルムが愛らしいエッグベーカーは、
50年以上のロングセラー商品で、これもバーナード・リーチ氏のアドバイスをもとに
生まれた逸品だそう。網の上やオーブンで調理して、
そのまま食卓に並べられる、お洒落で機能的な器です。

フタを開けると、ふわりと卵の香りが漂い、
出来上がった目玉焼きはトロリと絶妙な半熟具合に仕上がっていて、
これまでに食べたことのないおいしさでした!

盛りつける器によって、ごはんのおいしさは変わると思いますが、
「これを使って次は何を作ろうかな…」という、調理が楽しみになる器には
初めて出会ったように思います。

そう思わせてくれることこそが、暮らしの中に溶け込む
"民藝の器"である証なのかもしれません。

お茶文化が根づく町

島根県では、出雲市にある無印良品 ゆめタウン出雲へ。

いつものように人気商品を伺うと、紹介してくださったのがコレ↓

スタッフさんが手にするのは、
有機ハーブティーティーバッグ ルイボスティー(写真左)と、
スティック切れ端干しいも(写真右)です。

上述の通り、大名茶人の第7代松江藩主・松平不昧公の影響か、
出雲人はお茶が大好きだそうで、
お茶とお茶に合うお菓子が人気のようですね!

出雲地方では「ぼてぼて茶」という珍しいお茶も見かけました。
煮出した番茶を茶せんで泡立たせ、
その中にごはんやお豆、たくあん、こんぶなどを入れて飲むというもの。

名前の由来は、泡立たせる際の音から来ているそうですが、
そのルーツは、奥出雲のたたら製鉄の職人さんたちが高温で過酷な作業の合間に、
立ったまま口に流し込んでいた労働食だったという説や、
不昧公の時代の非常食だったという説、
上流階級の茶の湯に対抗して庶民が考え出した、
趣味と実益を兼ねた茶法だとする説などいろいろあるようです。

そういえば、富山県では「バタバタ茶」というものに出会いました。
なんだか響きが似ていますね。

ちなみに、ルイボスティーは南アフリカに伝わるノンカフェインのハーブティーで、
口当たりがとても滑らかで、なんだかホッとする味。

スティック切れ端干しいもは、その生産者を茨城キャラバンで取材しました。

無印良品のお茶もお茶菓子も種類がたくさん。
あなたのお気に入りの組み合わせを見つけてみてください!

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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