MUJIキャラバン

遠州産のコーデュロイ

2013年03月20日

先月、Found MUJIで「日本の布」という企画が行われました。
日本全国の布の産地を訪れ、作り手と一緒になって
新しい価値の創造を行おうというもの。

今回、私たちキャラバン隊もその企画でお世話になった、
コーデュロイの生産者を訪ねました。

もともと、コーデュロイは、ベルサイユ宮殿を建てたことでも有名な
フランスのルイ14世が、庭仕事をする召使いの制服として用いたことが始まりだそう。
語源はフランス語の「Corde-du-Roi(王様の"畝(うね)")」
から来ているという説もあります。

日本では明治時代前期に、鼻緒の需要から江戸で製造が開始され、
その技術が静岡県西部の旧磐田郡福田町(現磐田市界隈)に伝わり、
現在も同地域で全国の95%以上のコーデュロイが作られているといいます。

コーデュロイとは、縦方向に"畝"のある、主に綿の織物のことで、
厚手で耐久性に優れ、保温性が高いため冬物の服によく用いられます。

コーデュロイに限らず、静岡県西部の遠州地方は繊維産業が盛んですが、
その理由は3つありました。

1つ目は、立地条件。
江戸時代中期以降、各藩の奨励もあって綿作りは全国に普及しましたが、
遠州地方は、温暖な気候などに恵まれていることから、
愛知県東部の三河、大阪南部の泉州と並び、
3大綿産地の一つとして全国に知られるようになりました。

2つ目は、海沿いの地域で、漁船のための帆布が作られていたため、
厚い布を作る技術があったのです。

そして、3つ目の理由を、Found MUJIの企画でコーデュロイの布を織ってくださった、
福田織物の福田靖さんが教えてくださいました。

「この地域には、昔から織機を作る合金技術があったんです。
浜松に本社がある、スズキ自動車も本田技研もヤマハもそうですし、
スズキもお隣のトヨタも最初は織機を作っていたんですよ」

そう聞いて、以前、別の織物工場で「豊田織機」の機械を見て、
それが自動車のトヨタであることを知って驚いたことを思い出しました。

コーデュロイは毛皮のような動物素材ではなく、
自然素材(綿)を用いたもので冬に適した唯一の素材だそう。

コーデュロイの保温性が高いのは、
パイル繊維の間に空気層ができるからだそうですが、
生産工程において、よこ糸で形成されたパイル糸を切る
"カッチング"と呼ばれる作業がとても重要だと福田さんは話します。

しかし、残念ながらこの技術を持つ職人が年々減少しているそう。
福田さんは、引退宣言をしていた高い技術を持つ、職人の星野秀次郎さんを説得し、
2年前からオリジナルのコーデュロイ生地を一緒に開発するように。

それがFound MUJIで今回お披露目された生地だったのです☆
パッチワーク柄のコーデュロイで、綿花のようなフワフワの手触りです。

福田さんに紹介いただき、星野さんの工場、ホシノへ。
すると、星野さんがちょうどカッチングの作業中でした。

福田さんの工場で織られた布のパイルよこ糸(写真下)を
1本ずつ切っていくのですが、
こんなに細かい糸を一体どのように切っていくのでしょうか?

その答えはこれでした!

「ガイドニードル」と呼ばれる細い針の先で、パイルよこ糸を持ち上げ、
その上がった部分を、円形カッターで切っていくのです。

細かい畝のコーデュロイを作るには、
ミクロン単位で、ガイドニードルやカッターを削り、
それらを一つひとつ手作業で設置していく必要があるんだとか。

「細かすぎてもう目では見えないから、指の感覚で見るんですよ」

職人歴47年の星野さんは、過去使ってきた様々な種類の
ガイドニードルやカッターを捨てずにとっておいたからこそ、
現在の細かいカッチングにも対応できているといいます。

星野さんの手にかかれば、絵や文字を表現することも可能ですし、

この波模様のようなカッチングも、8年かけてその技術を完成させたそうです。

「コーデュロイが"メイド イン 福田町"というのを知ってほしい。
技術の底上げのためにも、オンリーワンじゃなくて、
ナンバーワンを目指してやっていきたいですね」

星野さんがカッチングに懸ける想いを話すと、福田さんも続けます。

「産地が生き残っていくためにも、"いいモノ"ではなく、
"人を感動させられるモノ"を作りたいと思っています。
そのためにも、私が世界一だと思っている星野さんのカッチングの技術が必要。
星野さんとの新しい技術の開発は、若い世代にコーデュロイの可能性を知ってもらい、
後継ぎを作ることが目的なんです」

「先輩たちが頑張ってきてくれたコーデュロイを守りながらも、
新しいコーデュロイ開発していくのが自分たちの使命。
一人でも多くの人に、遠州がコーデュロイの産地であることを伝えていきたいです」

福田さんと星野さんの想いが一つになり、
そこから新たな技術が生み出されていく。

その魅力を発信していくことのお手伝いを、
Found MUJIやMUJIキャラバンで少しでも担えたら、
これほどうれしいことはありません。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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