いい子になぁーれ!
石徹白から車で30分ほど走った郡上の山里に
1軒の工房があります。
ここでは、2人の女性が石鹸づくりをしています。
「いい子になぁーれ!
っていつも話しかけながら作っているんですよ」
そう、和やかに話してくださったのは
「アトリエキク」の上田さん(右)と中島さん(左)。
もともと郡上に生まれ育った上田さんの
実家のお母様が立ち上げられた「アトリエキク」は
夏は農業、冬は和雑貨の製作を中心とした活動でしたが、
昨年末、薬剤師の中島さんが加わり
化粧品づくりを始めました。
「石鹸づくりは季節や温度・湿度によって出来が違って、
作るのがとても難しいんです。
今でも時々始めたことを後悔したりもしますが(笑)、
でも"ここ"でできることをやりたかったんです」
アトリエキクの石鹸も、もちろん平野さんの石徹白洋品店で
販売されていました。(上)
これらはすべて、郡上の天然水を使用しています。
他にも、地元で採ったドクダミの葉を使った石鹸や
地元の日本酒を使った石鹸を作っているとのこと。
実は工房の中には無印良品の商品がいっぱい。
「ずっと好き」という言葉に、うれしくなって思わず長居してしまいました。
勧められて、手まで洗わせていただくことに。
ここで"くらしのヒント"を発見。
改めて「手を洗う」ことはなんと気持ちの良いことでしょうか!
心まで清浄になるよう。そして贅沢な気分。
郡上の水と、いい子に育った石鹸。
「1番手間のかかる作り方ですが、地域の素材を活かした
石鹸を作ることが出来るんです。」と上田さん。
「何よりこの集落の原料で作ったモノを外に出すことで、
外部とのつながりが生まれれば嬉しいです。」
土地に根ざしたものづくりは、良い商品を生み出すためだけでなく、
本当にその地を愛しているからこそのものだなぁと羨ましくもありました。
それから、アトリエキクさんの石鹸に使われている、
日本酒の蔵元へ連れて行っていただきました。
同じ郡上市にある、創業元文5年の布屋さんで造られていたのは、
お花の名前がついた日本酒。
杜氏にお話を伺うと、なんとこれらのお酒は
天然のお花から採った酵母を使って、造られていたんです!
自然界の花から天然優良酵母を分離する方法は、
東京農業大学短大の長年の研究により、
世界で初めて確立されたものなんだとか。
地元の人同士のコラボレーションによって生まれたこの石鹸は、
間違いなく、この土地の自慢になると思います。
でもどうして、出会う皆さんがこんなに優しいのでしょう。
帰りに「布屋」さんからキャラバンカーで出発するとき、試飲の会のために
この蔵を訪れていた皆さんが両手を振って見送ってくださいました。
やっぱり、「いい子になぁーれ!」のせいでしょうか。