MUJIキャラバン

益子焼を体感!

2012年04月30日

日本には全国にやきものの産地があります。

やきものが始まったのは今から約1万2000年前といわれていますが、
日本でやきものが盛んになったのには、
日本人の生活スタイルが関係していたようなのです。

定着型の農耕民族は、食料を保存するのに瓶や壺が必要でした。
一方、狩猟民族の国は、移動が多い生活なので、
重くて割れやすい、やきものを使う習慣は広がらなかったといいます。

2012年2月、Found MUJI青山では、
"日本の10窯"と題して、日本国内の10カ所の陶磁器の産地で作った器を
販売するイベントを行いましたが、
今回はその10窯のひとつである「益子焼」の産地、
栃木県芳賀郡益子町を訪れました。

益子焼について教えていただいたのは、
益子最大の窯元「つかもと」、企画課の関さん。
現在の企画担当になる前は、17年間陶芸職人をされていた方です。

益子焼についてご紹介する前に、まずはやきものの基本、
陶器と磁器の違いについて。

「陶器は粘土、磁器は石の粉を使ったやきものと考えていただくと
分かりやすいかもしれません」

陶器は粘土が原料で、厚手であるために
"熱しにくく冷めにくい"ので、
熱いお茶や汁物を入れるのに向いているそうです。

一方の磁器は、薄くて丈夫なのですが、
"熱を伝えやすく、冷めやすい"のだとか。

また、磁器は型に流し込みやすい一方で、
陶器は粘土で粘り気があって型に流し込めないため、
小~中量生産しかできないといいます。

ちなみに、益子焼は代表的な陶器の種類のひとつで、
江戸時代末期に、現在の茨城県笠間市で修業した陶工が
益子町に窯を築いたことが始まりといわれているそうです。

当初は水がめ・火鉢・壺などの日用道具が主だったのですが、
その後、ふだん使いのできる食器づくりに移っていったのだそう。

実際に作っているところを見せていただき、

続いて、私たちキャラバン隊も挑戦!

職人さんがやるのを見ていると、スルスルと粘土の形が変化していき、
一見簡単そうにも思えたのですが…

いざ、自分でやってみると手に力が入ってしまい
思うような形づくりができません。

それでも職人さんに助けていただきながら、なんとか形になりました!
焼き上がって手元に届くのは約1ヶ月半後だそうですが、
どんな仕上がりになったか楽しみです。

さて、MUJIキャラバンでは、今後も日本のやきものの産地を
出来るだけ訪ねたいと思います。
それぞれの土地に伝わる器との出会いにご期待ください。

美しい燃料、「菊炭」

かつては一般家庭でも、燃料として使われていた「炭」。

高度経済成長にともない、ガスや石油が普及するにつれ、
その用途は飲食店や、バーベキューなどのレジャーへと移り変わってゆきました。

炭火はじっくりと焼き上げることができるため、
それ自体をうたい文句にしている飲食店も少なくありません。

同じように、炭火でじっくりと温める茶道の世界では、
見た目の美しさも求められるようです。

その茶道で使われる炭が、菊炭と呼ばれる
割れ目が菊の花を思わせる模様の炭です。

東の佐倉炭、西の池田炭と広く名が知られていたこの菊炭も、
今や数えるほどの窯元しか生産をしていません。

その希少な生産者の一つである、
栃木県芳賀郡にある市貝町木炭組合の片岡さんにお話を伺いました。

「小さい頃から、窯から煙が上っているのを見て育ちましたからね。
私の代で、廃れさせてしまいたくなかった」

西の池田炭は、愛媛の内子や大阪の能勢に窯元が残っているようですが、
東の佐倉炭は、震災の影響を受けた福島を除くと、ここ芳賀郡しかないようなのです。

そんな片岡さんの窯は、昔ながらの石窯で、
薪をくべる伝統的な製法を守っていらっしゃいました。

木の水分量や状態に応じて、窯の焚き方や温度を調節し、
一度、火をつけたら、生き物のように見守らなくてはならないんだそう。

主の素材はクヌギ。

「この界隈には、自然のクヌギがたくさん生えています。
クヌギは切ってあげないと、木が死んでしまうんです。
切ってあげれば、また6~7年で新木が生えてくる。
そういう意味でも炭は、理に適った自然エネルギーなんですよ」

森林伐採につながるのでは、と一瞬でも考えた自分の無知さを恥じました。

こうして出来上がった片岡さんの茶道炭がこちら。

「下野菊花炭」

菊の花のような美しさです。
火つき・火持ちも良いようで、
ずっと眺めていても飽きることの無い模様をしていました。

燃料にも美しさを求めるのは、日本人の美に対する感性を象徴するかのようです。

「ガソリンでも、レギュラーとハイオクを混ぜるわけにいかないですよね。
炭も同じで、良いものを作り続けなくてはならないんです」

片岡さんの炭づくりに対する信念を感じる言葉でした。

省エネが叫ばれる昨今、何のエネルギーを使うのか?
消費者である我々も、もう一度考え直す必要がありそうですね。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

最新の記事一覧

カテゴリー