MUJIキャラバン

麻をもっと身近に

2012年05月02日

古くから、人間のくらしと共にあった麻。

かつては、日本でも全国各地で生産され、
織物や袋、綱、紐などの原料として利用されてきましたが、
戦後、化学繊維の台頭による需要の減少によって、ほとんどの地域で生産が途絶えました。

現在に残る生産地域は、岐阜県や滋賀県、群馬県の一部と栃木県。
その中でも、日本最大の麻の産地、栃木県鹿沼市永野(旧粟野町)を訪れました。

良質な麻が育つ土壌は、一般的には痩せた土地と呼ばれる、砂礫地で水はけが良い土壌。
栃木県のこの界隈は、台風や雹害の少ない地域としても、適地であるそうです。

この地で収穫された麻は「野州麻」と呼ばれ、
昔から品質の高い国産麻として知られています。

そんな野州麻を見に行くと、3月末に種まきをしたばかりで、
今はちょうど芽が生えてきたところでした。

「これが、7月中旬の収穫期には、2m30cm程度にまで大きくなるんです」

そう教えてくださったのは、この地で8代にわたって麻の生産を続けている、
大森家の芳紀さん。

失われつつある麻の文化を現代に伝えるべく、
9年ほど前から麻を原料にした和紙づくりを始め、
その和紙を使ったランプも手掛けています。

家族で営むカフェでは、大森さんの作ったランプで
あたたかみのある雰囲気に包まれるなか、
麻の実の入ったピザを食べることもできました。

現在、国産麻の用途の7割程度は神事用(しめ縄や鈴縄など)、
残り3割も弓道用の弓具や、日光下駄の縫紐、
喧嘩凧などの特殊な用途が多いんだそう。

「育ちが早くて丈夫な繊維である麻を、
今一度、生活の身近なところに感じてほしかったんです」

大森さんは、麻紙づくりを始めたきっかけを、そう語ってくださいました。

しかも、麻紙の原料は、
麻を紡績の原料(セイマ)になるように精製する過程でできる「オアカ」。

昔は堆肥として、使われていたようですが、
1kgのセイマを作るのに、1.5kgのオアカができるため、
今では堆肥としても使いきれていなかったそうなのです。

その製法も、稲わらやぬかを使って発酵させ、
麻から繊維を取り出すという、自然の原理を利用したやり方。

「化学製品を使ってみたこともあるのですが、やっぱり繊維が傷んでしまうんですよね」

麻の繊維は丈夫であるという特徴を活かすために、
徹底的にこだわりぬく姿勢には脱帽でした。

昔から人のくらしを支え続けてきた、麻。

丈夫で、通気性も良く、濡れても乾きやすいため、
現代のくらしの中でも、もっとたくさん活用できるシーンがあるはずです。

無印良品でも、麻を使ったくらしのキャンペーンが始まりました。

麻のある生活、初めてみませんか?

救荒作物、そば

救荒作物ってご存じですか?

米・麦のような主食となる作物が凶作時でも、生育して、
ある程度の収穫量を得られる作物のことです。

以前に記した「雑穀ごはん」でも登場した「あわ」や「ひえ」、
また、慣れ親しまれている食では「そば」もそれにあたります。

そばは75日間程度で成熟する短期作物のため、二毛作も多く、
先述の麻の裏作としても多く作られているようです。

そんな特性のため、そばは日本各地で作られていますが、
栃木県日光市で、初めてのそば打ちを体験してきました。

元々、米の穫れなかったこの地域では、
そば打ちができないと、お嫁に行くことができなかったそうですよ!

まず、そば粉8に対して、小麦粉2を混ぜた粉に
卵と、サラダオイルを少し加え、混ぜます。

水を少しずつ加えながら、
耳たぶと同じぐらいの柔らかさになるまでこねていきます。

これが結構な重労働…。

ふっくらと弾力のある状態までこねあげたら、

今度はそれを少しずつ引いていきます。

手早く伸ばしていかなければ、「そばが風邪を引く」と呼ばれる
そば粉が乾いて、ひからびる状態になってしまうため、
休んでいる暇はありません。

切らずに均等な状態に伸ばしていくためには、
絶妙な力加減が求められるため、難しいんです。

1回目の引きは思いっきり失敗してしまい、
こね直す結果となりました。

2回目の引きでなんとかまとめ上げたそばを、
何層かに折り重ね、そば包丁で切っていきます。

薄く切らないと、きしめんのように太い麺になってしまうと言われましたが、
結果、出来上がったそばは…

この太さになってしまいました!

初めてにしては、そばの形に仕上がっただけよかったですが、
太さ、長さともに、お店で出てくるそばにはない形ですね。

ただ、そのコシは、今まで味わったことのないほどで、
美味しく頂けました。

そばの生産の背景を知ったうえで、自らの手で打ったそばのため、
美味しく感じたのかもしれません。

モノの背景を知ることは、
モノの価値を再認識することにつながりますね。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

最新の記事一覧

カテゴリー