MUJIキャラバン

東京の山をキレイに

2013年04月18日

これまで何度か林業に携わる方のお話を伺ってきましたが、
「東京で林業に携わる若手チームがいる」
そんな噂を各地で耳にしました。

東京の最西端、西多摩郡檜原村(ひのはらむら)は約9割が山という環境で、
そこで活動する「東京チェンソーズ」は平均年齢36歳というから、
いろんな意味で驚かされました。

6人のメンバーは皆、父親が林業をやっていて仕方なく…
というのではなく、自ら志願して林業の世界に入った人たちです。

代表の青木亮輔さんは、高校時代からキャンプをしたり、
自転車旅をしたりするアウトドア派で、
「探検部」のある大学に入り、日々、誰も行ったことのない場所へ行き調査する、
というワイルドな学生生活を送っていたそう。

卒業後、青木さんは電話営業の仕事に就いたものの、
やはり体を動かす仕事をしたいと退職。

「将来ずっと続けていくには、林業はいいかもしれない」
そう思って、大学で学んでいた林業の世界へ飛び込んだといいます。

東京都森林組合の緊急雇用に応募し、そのまま職員となった青木さんですが、
「自分たちの働く環境をもっとよくしたい」と、
同じ組合にいた仲間たちと、2006年に独立。

「林業は天候に左右される仕事なので、これまで日給月給制でしたが、
それを月給制でできないかチャレンジしてみようと思いました。
『林業は不景気だから仕方ない…』
と上司はよく言っていましたが、それでは何も変わらない」

青木さんたちは、森林組合の下請けの仕事からスタートし、
続いて、公共事業の入札にも参加するように。
しかし、入札制に対して、青木さんは次のように語ります。

「林業は作業単価が昔から低いんです。
農業・林業は食べるためになくてはならないけど、
林業は今なくなっても誰も困らない…。
入札制で価格競争になると、手入れがおろそかになりかねない。
本来は地域の作業員が自分たちで手入れをする方がいいんです」

最近は、他地域の事業者が檜原村の作業をするようにもなり、
林業が地域密着とはいえなくなってきたといいます。

「地域の人に理解してもらおう! 地域に根差した企業にならないと!」
と、コツコツ信頼を積み重ねてきた東京チェンソーズは、
今では山主から直接仕事をもらえるようになりました。

「林業って銀行のような仕事。山(=お金)を預かっているのと同じですから。
責任は大きいけど、今後も直接仕事をもらえるようにしていきたい」
と青木さん。

そして、そのために、まずは自分たちの存在を知ってもらいたい
とFacebookやTwitterを通じて積極的に情報発信をしています。

元ライターで、東京チェンソーズの広報も担当する木田正人さんは、
「東京チェンソーズをキッカケに東京の山について知ってほしい」
と話します。

東京チェンソーズでは、日々の活動内容の発信はもちろん、

「チェンソーボーイズコレクション」と題して、
作業姿の写真をメンバーが個人的に公開したり、
一般の人が林業に親しみを持てるようにしています。

また、普段なにげなく見ているだけの木に触れ、登ることによって、
よりいっそう木を身近に感じてもらおうと、
"ツリークライミング体験会"も開催。

これまで"育林"を中心に行ってきた東京チェンソーズですが、
今後は間伐材を利用していくフェーズに。

「昔は日本の木が育っていなかったために、外材を使っていましたが、
国産材が育った今はそれを使う方がいい。
木も他の農産物と同様、輸送費が少なく、その地域に合った木が育っているから
本来"地産地消"がいいんです。
東京の木を使えば東京の山がキレイになりますからね」
と青木さん。

私たちの身の回りには木材製品がたくさんありますが、
それがどこで育った木なのか、誰が手入れをして切り出した木なのか、
そうしたことを考えてみることが、林業を知る初めの一歩かもしれません。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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