トットリノススメ
「いいまちに住みたい。
どこかに引っ越してもいいけど、
ここを耕すって方法もある。このまちの特殊性は
僕らが暮らしていることにある。
それは、砂丘やマンガよりずっと深くてゆるぎなく、
かつ、不確実で頼りない。世界のほとんどは気持ちで出来ている、と思う。
僕らはたくさんの仲間とここに居る。
このあいまいで確実なコミュニティーが、
お互いに気持ちのチューニングをし合う
そういうまちに住みたい」
"街を歩いて、発見して、頭の中の地図を書き換える月間"
「トットリノススメ」のキャッチコピーです。
鳥取市では5年ほど前から、秋から冬に入るまでのあいだ、
市内の店舗や空きスペースを利用して、様々なイベントが催されています。
あるレコードショップではドキュメンタリーフィルムの上映会、
あるパン屋さんではトークイベント、旧病院跡では大学生が運営するカフェ、
など
。
どれも街の人が自主的に企画し、運営しているイベントです。
ちょうど私たちが鳥取市にお邪魔した時にも、
韓国焼肉レストランでトークイベントが催されていました。
その日は「ゲストハウスの作り方」というテーマで、
大阪と鳥取でそれぞれゲストハウスを運営する人たちによるトークセッション。
会場には、ゲストハウスに興味のある人から、
単純におもしろそうな人たちの話を聞きたい人までが集まり、
好奇心が交錯しながらの、心地よい時間が流れていました。
「1ミリでもいいから、鳥取に住んでいる人たちで幸せを感じ合いたい。
そんな想いを持つみんなで作っているイベントなんです」
そう語るのは「トットリノススメ」の発起人、本間公(あきら)さん。
鳥取の木を主な木材とした家具製作や店舗内装を手掛ける家具工房
「工作社」を営んでいる方です。
初めてお会いした瞬間、「ようこそ鳥取へ」と手を差し伸べられ、
どこか外国人の雰囲気を感じたのは、本間さんがもともと旅人だったからかもしれません。
岐阜県高山市での木工修業を経て、
タイ、インドネシア、オーストラリアといった外国を1年間放浪。
帰国後、年に5週間は休暇をとるという
オーストラリアのライフスタイルを実現すべく、
故郷、鳥取市に自身の工房を構えられました。
「帰郷したはいいんですけど、カフェはない、BARはない。
周りの人たちの気持ちもどこか都会に向いていて。
だったら、ないない文句言ってないで、作ればいいじゃん!」
そういって、運営したい人と一緒に、空き物件を見つけて、
カフェをオープンさせてしまいました。
古い建屋を改装した店内は、とても落ち着く空気が流れていて、
私たちも2日続けて、訪れてしまったほど。
都会のカフェとはまた一味違う魅力が放たれていました。
「このカフェによって、街中の人の流れも、人の意識も変わった。
"変わる"おもしろさを知ってしまったのはそれからだね」
この経験が、「トットリノススメ」のような企画につながったのでしょう。
旅に出たい衝動に駆られながらも、
「旅に出なくとも自分の身の回りを耕せばいい、
そのためには周りの人たちの意識を変えればいい」
そう考えるようになっていったんだとか。
本間さんは、「トットリノススメ」の役割を、
"気持ちのチューニング"と話します。
数々の民藝に代表されるものづくりや、人と人との近さ。
こうした鳥取の魅力を、この機会に再認識するきっかけになればと。
「イベント打って儲かるわけじゃありません。むしろ、採算は度外視。
各店舗の人たちが、あくまでも自主的に企画・運営しているんで、
気持ちが満ちればやればいいし、満ちなければやらなければいい」
そう話す本間さんは、あくまでもニュートラル。
今年4回目を迎える「トットリノススメ」には、10/28~12/9に、
16カ所(店舗含む)で20を超える企画・イベントが催されています。
「いいまちに住みたいから、ここを耕す」
鳥取のように、皆がそんな気持ちになれば、
きっと地域はもっと楽しくなるのではないでしょうか。