おきぐすり
突然ですが、みなさんはケガをしたり、体調を崩したりした時に
どのように対処しますか?
病院に行く前に、まずは市販の薬を なんて人も多いのでは?
だけど、買った薬をすべて使い切ることって意外に難しく、
次使う時には使用期限切れということも経験あるかもしれません。
それを解決してくれるのが、「おきぐすり」。
以前は「売薬」といわれていた薬の販売方法で、
配置員が、直接消費者の家庭を訪問して、薬をあらかじめ消費者に預け、
次回訪問した時に、消費者が服用した分だけの代金を集めていくというもの。
これであれば、使い損じが生じなくていいですよね。
そんな「おきぐすり」が始まったのが、300年以上前の富山といわれています。
当時、加賀藩から分藩した富山藩は、財政難に見舞われていました。
そこで、自分も体の弱かったお殿様が、薬産業を始めさせたんだとか。
当時の一般庶民の日常生活では、貨幣の流通が十分ではなかったために
この「先用後利」(用を先に利を後に)の仕組みは大変重宝がられたそう。
"信頼"がないと成り立たないこの仕組みは
今のクレジット商法の前身でもあるようです。
富山市内には、当時の薬売りの様子を表した像もありましたよ。
そして、この「おきぐすり」とともに発展したのが、「越中和紙」。
薬を包む紙や袋はもちろん、
子供たちのお土産用に配る、紙風船や版画絵にも使われていたそう。
もともと字を書くための紙ではなく、
加工する紙として製造されてきた越中和紙は、
おきぐすりやさんのカバンとしても活躍していたほど丈夫。
今でも名刺入れやブックカバー、小物入れなどが作られています。
ところで、レトロな薬袋のデザインを見ていて
気づいたことがありました。
だるまの絵が多いこと!
先日、群馬の高崎でそのルーツを探った"だるま"ですが、
こんなところにも登場していたとは。
なにやら、だるまは寝てもすぐに起き上がることから、
薬袋のデザインに多用されていたそう。
他には、早く治ることの象徴として、ロケットや飛行機のデザインも
多かったそうですよ。
こうして、ひとつの事柄を見ていくと、
付随してどんどんと別の事柄も見えてきて面白いですね。
「まいどはや まめなけ」
これは「ごめんください 達者でしたか」の意味を含む、
富山のおきぐすりやさんの昔ながらの挨拶言葉。
現在も1300人ほどのおきぐすりやさんが、
富山を出て全国を回っていると聞きます。
信用で成り立っている「おきぐすり」は
日本ならではの商売手法なのかもしれませんね。