MUJIキャラバン

水と共に生きる

2012年05月17日

水を飲みたい時には水道の蛇口をひねる。

そんな生活が当たり前の私たちにとって、
富山県黒部市生地(いくじ)の人たちの生活は驚きでした。

この地区では、飲み水は汲みに行くものなんです。

かつて暴れ川と称された黒部川の扇状地に位置するこの地区は、
昔から、洪水などに見舞われながらも、
こんこんと湧き出る清らかな水を、生活に利用してきました。

黒部ダムの建設によって、黒部川の氾濫は抑えられるようになりましたが、
今でもその大量の伏流水が湧き出ており、町の至る所に水場が存在しているんです。

この湧水は「清水(しょうず)」と呼ばれ、
今でも飲み水、炊事用などに利用されており、
タンクに水を汲みに遠方からも人が来るほどです。

生地にはこうした水場が11ヵ所も残っており、
「共同洗い場」と呼ばれ、一昔前まではここで野菜を洗ったり、洗濯をしたりと、
地域の人たちのコミュニケーションの場ともなっていたんだそう。

今でも、こうした洗い場は、地域ごとに地元の方々によって管理され、
みんな自分のところの水が一番!と信じて疑わないため、
町のボランティアガイドは、どこの水が美味しいとは、案内できないそうですよ。

実際に、その内の一つで水を口にすると、
水温が低い軟水で、とっても爽やか!

しかも、これが水場によって、汲み上げている深さが違うようで、
100mのところと70mのところで、また味が変わるんです。

多くの家庭にも湧水が出るようで、
町の酒蔵は清酒に合う水を利用したり、
住人はご飯を炊くのに適した水を利用したりと、
用途ごとに水を使い分けているんだとか。

なんと贅沢な水の遣い方でしょう。

水場の近くでは、おばあちゃんたちが井戸端会議をしていました。
話しかけてみると、とても元気で肌艶もこの通り。

「これも清水のおかげだよ」

と、笑顔で答えてくれました。

翌日、この清水の源流を見てみたくなり、
黒部峡谷、立山へと足を運んでみました。

その渓谷は険しく、流れ込む雪解け水は確かに豊富。

そして、その源が、
この立山をはじめとした北アルプスに降り積もった雪です。

GW時で、この積雪量(17m)ですから、
真冬時の豪雪ぶりは相当なものでしょう。

そりゃ、この雪解け水が流れ込めば、川も氾濫するわけです。

豪雪と、黒部川の氾濫に見舞われ続けたこの地のくらしは、
その環境を受け入れ、共存しているものでした。

その地で生活する人たちは、
水の脅威とありがたみを誰よりも知っている気がしました。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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