連載ブログ 私の好きなもの

「古着と呼べない」

2011年09月14日

洗えば洗うほど味が出る。木綿のしっかりした布地を形容するのに昔から使われてきた言葉です。
またずっと前の話になってしまいますが、ある夏手に入れたシャツとスカート。
どちらも新進のデザイナーの製品でした。一つは東京で、一つはパリで買ったもの。それらをこの夏も着て楽しみました。

直線裁ちから東洋の風が起こる、などと反抗気分で服を選んでいた頃のことです。ちょうど服装史的には日本のファッション・デザイナーが西欧の目を惹きつけていった70年代後半から80年代の時間帯でした。
きものという、民族衣装の最高を極めたとも言える遺産を現代生活でどう日常化するか。大きくて未だに試みの続くテーマですが、一つハッキリしているのは直線裁ちの良さで、収納、移動に具合がいいことです。
パリでその70年代にみつけたスカートは、フランスのデザイナーが実に簡単に作った形で、素材をお楽しみ! と言っているような潔さを感じます。

スカート たたむ形 いろいろ

シャツは原型そのものと言った風情で、アメリカ開拓時代の人々が着ているのを映画で見たような、そんなデジャブ感もあります。でもよくよく素材を見れば日本の野良着の感じの方が強い、それは貼りつけたポケットの四角と関係があるかもしれません。ポケットの口は縦にストンとあるだけなのも日本発のデザインの面白さでしょう。

洗いざらし。洗うという言葉に晒しがついて、それは風合いという表情を生み出していきます。「晒す(さらす)」原動力は太陽と水です。それらが作る風合いだから"洗えば洗うほど"表情がでてくるのですね。
何十年も、引っぱり出しては着ているこのような木綿着は、愛着の日常服で、古着とは呼びたくないのです。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    K.K.Fさん

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