個性の違う、ふたつのミニバラの産地を訪ねて
Flower MUJI の「母の日」特集では、3アイテムのミニバラをご紹介しています。
いずれも東海地方で育てられたものですが、
赤とピンクは最新設備の整った、大きな農場で育てられたもの。
香りのミニバラは、個人の生産者が香りにこだわって育てているもの。
それぞれの産地を訪ねて、特徴や育て方を聞いてきました。
最初は、赤とピンクのミニバラを育てているハウス。
広大なハウスの中には、一面にミニバラの苗が並んでいます。
ひとくちにミニバラといっても、葉の色は品種によって異なるのがわかります。
こちらのミニバラは、約130年の伝統と実績のある、
デンマークのバラの育種会社によって育種されたもの。
一般的なミニバラとは異なり、比較的少ない光でも花を咲かせやすく、
室内でも楽しむことができたり、
お花を長く楽しむことができたり、
病気や害虫に強く、育てやすい、といった特徴があります。
そして、長い期間をかけなくても
株がしっかりとしたミニバラに育てることができるのも特徴のひとつです。
まずは挿し木。
葉を数枚残して切った茎を土に挿し、ビニールのシートで覆い、発根させます。
この状態では、根がまだ生えていないので、
土中から水分を吸い上げることができません。
葉から蒸散する水分の方が多いため、葉が乾燥してしまうのを防ぐために
覆っています。
何だか息苦しそうですが、根を生やすために大切な工程です。
根が出て、新しい葉が出てきたら、このまま大きくして、
と思いますが、ピンチと言って、伸びた茎を短く刈り込みます。
ピンチの作業も、このハウスでは機械を導入しています。
この作業によって、枝が増えてボリュームがつき、花芽もたくさんつくのです。
最新設備が整った、このハウスでは、ナトリウムランプも使用しています。
曇りや雨が続いておひさまの光が足りないとき、
ナトリウムランプのオレンジ色の光が日照不足を補い、
植物の成長を促してくれます。
ハウス内の温度を上げれば、植物は成長しますが、
おひさまの光がないと、ヒョロヒョロとして、茎がやわらかく病気になりやすい状態に
育ってしまいます。
おひさまの光は植物の成長に欠かせない要素です。
このナトリウムランプによって、天候による植物の成長スピードのずれが少なくなり、
母の日にちょうどよい状態のミニバラを出荷することができます。
次は香りのミニバラのハウスです。
ナトリウムランプのような設備はついていませんが、
とてもきれいなハウスです。
赤とピンクのミニバラは、ご紹介したように、最新設備と、
それに関わるたくさんのスタッフによって育てられています。
一方、香りのミニバラは、個人の生産者さんが、こだわりと長年の経験をもとに
育てています。
こだわりのひとつは、育てている品種。
バラは人気のお花なので、品種改良も盛んに行われています。
そのときに重要視されるのは、花色やかたち、保ち。
香りは目の前にないと確かめてもらうことができないので
伝えることがむずかしく、香りのある品種は少なくなってしまいました。
その中でも、ミニバラは香りをもたせることがむずかしいのです。
この生産者さんは、香りのあるミニバラを約10品種育てています。
その中でも、いちばん香りのある品種を、Flower MUJI の母の日特集で
ご紹介しています。
撮影のときに届いた香りのミニバラは、箱をあけた途端、
とってもいい香りがあふれ出てきました。
こだわりのふたつめは、液体肥料ではなく、固形肥料で育てること。
バラは肥料をたくさん必要とする植物ですが、
多くあげ過ぎてしまうと弱ってしまうので、量の見極めが大切です。
液体肥料の方が管理はしやすいのですが、
お手元に届いてからの保ちを考えて固形肥料をあげています。
液体肥料は後から水をあげると、水と一緒に流れ出てしまいますが、
固形肥料は土の中に肥料の成分が残ります。
そのため、気温も肥料成分も管理されたハウスから環境が変わっても、
いきなり水だけになって大きなストレスを感じることなく、
長くお楽しみいただけるように、と考えているのです。
同じ品種を育てても、肥料や水の管理によって、お花の大きさや保ちが
変わってきます。
経験がとても重要ですが、すべてに目の届く範囲でやっている
個人の生産者さんだからできることです。
冬季は無加温のハウスで管理をして、寒さにあてます。
自然と同じサイクルにすることで、春に花芽をつけるのです。
4月になったら、温度調節のできるハウスに移され、
母の日にちょうどきれいな花を咲かせることができるように見守ります。
ここもベテラン生産者さんの腕の見せどころです。
赤やピンクのミニバラは、短期間でしっかりとした株になるように
品種改良をされていますが、香りのミニバラはそうではありません。
倍以上の長い時間をかけて、じっくりと育て、母の日にあわせていきます。
母の日まで約1ヶ月。
それぞれ個性は違うけれど、どちらもちょうどきれいなお花を咲かせてくれそうです。