野の花を活ける
9月に入ると、山の芒(すすき)は、そろそろ穂を開き始めます。それに合わせるように、芒に似合う野の花たちが咲き競うのが、いまの季節。花屋さんで売っている花のような派手さはありませんが、よく見ると、どれも可憐な花たちです。誰かに見られるためではなく、咲きたいから、咲いている。野の花のそんな風情が好きで、我が家に招き入れました。そろそろ、中秋の名月。月に供えるのも、やっぱり野の花です。
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秋の野の花の中でも、特に好きなのが、「吾亦紅(われもこう)」。「吾も亦(また)紅(くれない)なり」という名前からして、素敵です。森に自生する吾亦紅をはじめて見たときは、その名のとおりの鮮やかな紅に息をのみました。東京の花屋さんでたまに見かけていたそれは、どこかくすんだ色をしていましたから、きっと気温や空気の違いなのでしょう。
そんな野生の吾亦紅を、ここ数年、滅多に見かけなくなりました。根が漢方薬の原料になるとかで、根こそぎ持ち帰る人が跡を絶たず、毎年群生していた場所からも、すっかり消えてしまったのです。今では、地元の農家が栽培したものを「道の駅」で買い求めるしかありません。野生のものとは色が違うように感じるのは、気のせいでしょうか...。
投げ入れ用の壺や一輪挿しは、山へ引っ越すとき、東京の友人たちから「お餞別」として贈られたもの。共通の友人であるアメリカ人陶芸家に「野の花に似合うもの」と注文をつけ、作陶を依頼したそうです。その作家は、陶芸家になる以前は日本のお地蔵さまを撮り続けるカメラマンだっただけに、野の花に似合うやさしい花器を作ってくれました。
それ以外に使うのは、野の花の風情を壊さない、シンプルなもの。タンブラーやワイングラス、ミルクピッチャー、何でも花器になります。