育てて食べる。
東京で暮らしていた頃、「風のがっこう」という農業塾で3年間学びました。わずか8坪の畑でしたが、3人家族では食べきれないほどの収穫があり、「東京産直野菜」と自慢して実家や親戚に送り届けたものです。
そんな暮らしを深めたいと富士山麓に移住したはずなのに、仕事の忙しさにかまけて、ここ何年か畑から遠のいていました。野菜作り復活のきっかけは、福島原発事故。いろいろな情報が錯綜して何を信じていいかわからない中で、「家族が口にするものは、できるだけ自分で作ろう」と思いを新たにしたのです。安心安全の面だけでなく、「消費者」という立場だけで暮らしている今の生活そのものを、もう一度見つめ直したいとも思いました。
裏庭に猫の額ほどの小さな畑を作り、里に下りて貸農園も借りました。標高約1300mの我が家は里より気温が低く、野菜によっては育たないものもあるからです。
右:隣の区画を借りているのは、福島浪江町から避難されてきたご夫婦。看板の文字が切ない。
富士北麓の春は遅いので、種蒔きができたのは5月。芽が出て、葉になり、花が咲き、やがて実る。人間は、ほとんど何もしていないのです。ただ、時々、あまりに生い茂る雑草を抜いてあげただけ。それでも季節を追いかけて育っていく植物の在り様に、自然の仕組みの素晴らしさを感じます。
上段は茄子、下段はトマト。いずれも左から、若葉→花→実。
「半干し」という一工程を加えることで、おいしくなり、たくさん食べられることも実感しました。時節柄、誰にでも気軽におススメするわけにいかないのが残念ですが。