ヤマボウシの果実酒
日に日に秋色が深まる森の中。樹上では、山栗やくるみ、どんぐりなどがせっせと実を結んでいます。そんな中、真っ先に鮮やかな赤い実をつけて楽しませてくれるのが、これ。6月29日付けのブログで、ハンカチのような白い花をご紹介したヤマボウシの実です(上の写真は果実酒を仕込むために軸の部分を切り落としたもの)。
ハンカチのような白い花(写真左)。花びらに見えるのは、実は4枚の苞(ほう)。苞が散ると真ん中の部分が青い実(写真中)になり、秋には色づきます(写真右)。
遠目には、ただ赤くて丸い実ですが、近づいてみると、このとおり。ゴツゴツした感じは、鉄兜のようでもあり、鬼の金棒のようでもあり、はたまた鉄瓶の肌のようでもあり...初めて見たときは、正直、あまりおいしそうな感じはしませんでした。
あまり期待しないで、とりあえず口に入れてみました。お味は...ライチにイチジクのねっとり感と甘さを加えた感じ(そういえば、皮のゴツゴツ感は、ライチに似ていなくもありませんね)。やや舌にざらつく感じはありますが、結構イケます。
ただし、皮をむいたらその場ですぐ食べないと、実がくずれてしまう。あまり保存はきかない感じなので、試しに果実酒にしてみたのが2年前のことです。
2年前の山法師酒をあらためて飲み直し、その味を再検討しつつ、二度目の仕込みに取り掛かることにしました。まるで黒糖で仕込んだかのような、コクと甘み。辛口好みの私には、そのままでは少し甘すぎて(だから2年前のものが残っているのでしょう...)、レモンを絞り入れたら、ちょうどいい感じ。いわゆる果実酒ではなく、炭酸などで割ってリキュールの感覚で飲んだほうが良さそうです。
色は、ご覧のとおりのワインカラー。
ヤマボウシの実そのものがとても甘いので、今回は氷砂糖をグンと控えて、仕込んでみました。さて、どんな果実酒に仕上がりますか...
ひとつの瓶という小さな宇宙の中で、果実がお酒と交わり、新しいお酒として生まれ変わる。そんな不思議を味わえるのが、果実酒づくりの楽しみかもしれません。あとは天に委ねて、「時間」が醸し出すものをゆっくりと待つことにしましょう。