連載ブログ 富士山麓通信

草もみじ

2011年11月02日

燃えるようなカエデの赤、目を射抜くようなイチョウの黄色・・・木々の紅葉は「錦秋」という言葉にふさわしいあでやかさです。この時季、高いところへ、遠いところへと視線が向くのも、知らず知らずのうちに紅葉を追いかけているのかもしれませんね。
一方、足元では名も知れない小さな草花たちが、秋の色に染まりながら冬の準備を進めています。木々の紅葉のような華やかさはありませんが、冬を迎える前の生命の営みが見せてくれる美しさは同じ。野の草花の移ろう姿にも美を見出し、それを「草もみじ」と呼んで愛でてきた先人たちの感性に心惹かれます。

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左はおそらく、アカザ。右の緑の葉はユキノシタですが、その他はさて・・・。

雪溶けの土から小さな芽を出し、若葉になり青葉が茂り、花を開き実をつけて、この季節を迎えた草花たち。春先からずっと目にしてきただけに、なんとなくわが子の成長を追いかける親のような気分になります。こうして紅葉(黄葉)した姿を見ると、別れの季節が近づいた一抹の寂しさも。
でも、植物が枯れるのは再生のための眠りにつくのだ、という話を聞きました。そう思うと、なんだかホッとします。

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左:蚊帳吊草(カヤツリソウ カヤツリグサ) 右:イタドリ
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  • (7)タラノキ
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一面の枯れ色に見えるすすきの原(左)も、近づいて見ると、1本1本の茎や葉に黄色や赤が交じっていいます。
  • (13)ツタウルシ
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左:樹にからまるツタは、ひときわ鮮やかな紅葉 中:シダの黄葉は、サンゴ礁を思わせます。
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左:スイバ 中:秋の俳句では「えのころもみじ」と詠まれる、えのころ草(ネコジャラシ)。右は、穂が金色に色づいたもの。都会の道端でも見られます。

「名も知れない草花」と書きましたが、名のない草花などありません。こちらが名前を知らないだけ。その不勉強を恥じつつ、いつも名前を呼んであげられない草花たちへのお詫びの意味も込めて、「草もみじ」のいろいろをご紹介しました。
庭の片隅や都会の道端でも見つけられる「草もみじ」。ちょっと視点を変えて、身近にある美しいものを探すのも楽しいものです。

◆写真に名前の入っていない草花の名前をご存知の方、また、間違った名前を書いていることにお気づきの方がありましたら、「あったらいいな!ご意見箱」から、ぜひ、お教えください。

草花について、たくさんの情報をいただき、ありがとうございました。
みなさんから教えていただいたことをもとに、随時、名前を追加・修正してまいります。

  • 写真(13)・・・「ツタ」と書きましたが、正しくは「ツタウルシ」。かぶれることの多いウルシ科の植物で、紅葉はきれいだけど要注意というものでした。
  • 写真(3)・・・蚊帳吊草をカヤツリソウとしていましたが、正しくは「カヤツリグサ」でした。
  • 写真(5)(10)・・・「ツタウルシの若い葉では?」というご意見をいただきました。
  • 写真(7)・・・タラノキ
  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    M.Tさん

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