連載ブログ 富士山麓通信

自家製パンチェッタ

2011年12月07日

野菜と魚好きのわが家では、肉料理が食卓に上るのはせいぜい1週間から10日に一度くらい。その数少ない肉メニューを支えるのが、自家製パンチェッタ、生ベーコンです。
かれこれ10年以上前になるでしょうか。ある週刊誌のエッセーにパンチェッタの作り方が書かれていたのを見つけ、「これなら私にもできそう」と思ってトライしてみました。エッセーの中ですから、細かなレシピもなく、いたって簡単そうに見えたのが良かったのかもしれません。
実際、作ってみると、簡単でした。材料は、豚バラ肉と塩と胡椒のみ。豚バラ肉のブロックに塩をすりこんで冷蔵庫で一晩寝かせ、あとは脱水シートに包み時々シートを交換しながら水分を抜いていくだけ。10日から2週間ほどで肉の色が変わったら、出来上がりです。

初日の作業:豚バラブロック約500グラムに対して、塩は大さじ2~3。シートに包みやすい大きさに肉を切り分け (左)、塩をすりこみ(中)、ビニール袋に入れて(右)冷蔵庫へ。一晩寝かせると、袋の中に水が溜まるほど水分が出てきます。

翌日の作業:ビニール袋から取り出した肉の水分を拭き取り(左)、粒胡椒を挽いて肉にすりこみます(中)。肉を包むのに使う脱水シート(右)の名前は、メーカーによってさまざま。

脱水シートで肉をぴっちり包み(左・中)、冷蔵庫へ。最初のうちは毎日、後半は2~3日おきにシートを取り替えます。ある程度水分がなくなったら、写真右のようにペーパータオルにくるんだ上でラップしてもOK。

小分け冷凍しておいたパンチェッタを解凍したところ。

一度に仕込むのは500グラム程度ですから、わが家で一度に食べきれる量ではありません。出来上がったものは、薄切りにし小分けして冷凍。欲しい時に少しずつ解凍して使います。急なお客さまがあっても、これさえあれば、とりあえず何とかなる。そんな頼りになる存在なのです。
パンチェッタは塩漬けの豚バラ肉で、いわば生のベーコンですから、加熱が必要。わが家では、弱火でじっくり炒めて「かりかりベーコン」にした後、パスタやスープ、チャーハン、サラダ、ピザなど、さまざまな料理に使います。ほんの少しこれが入るだけで、料理の味が数段アップするという、すぐれもの。親しい人を訪ねる時には、ブロックのままをお土産にすることもあります。

弱火でじっくり炒めて、かりかりベーコンに。脂が抜けた状態で使うのが、わが家流です。この脂は肉の旨みがたっぷり出ているので、炒め物に使います。

ベーコンと茄子のスパは、わが家の定番。冷蔵庫にある野菜を、適当に放り込みます。

カルボナーラは、生クリームを使わないのがわが家流。

茄子とベーコンのピザ。茄子はベーコンの脂で軽く炒めて使います。

その昔、シャンソン歌手の石井好子さんが書かれた「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」というエッセー本を読んだことがあります。その中に「巴里ではたいてい、どこの家のキッチンにもベーコンが転がっていて、日本人が油揚げを使う感覚で旨みを出すために使っている」といったようなことが書かれていました。
それが印象に残っているからでしょうか。わが家でも、パンチェッタは肉を食べるというより、旨みを出すためのダシ代わりに使います。肉と塩胡椒だけを使い時間が熟成した旨みは、正体不明のものが入っている市販のベーコンにはないおいしさ。料理全体の味を底上げするだけの力強さを持っている気がします。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    M.Tさん

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