りすの海老フライ
森を歩いていると、いろいろなものに出会いますが、この季節はこれ。地元の子どもたちが「リスの海老フライ」と呼んでいるので、今日はそれらしく盛り付けてみました。たしかに、形がよく似ていますね。さて、この正体は何でしょう?
海老フライの正体は、実は、松ぼっくり。松ぼっくりの奥に潜んでいる松の実を食べるために、その周辺をリスが齧った跡なのです。
リスの海老フライを見つけられるのは、冬。春から秋にかけて見かけることは、滅多にありません。おそらく、森の中の食べ物が豊富にある時季は、わざわざ松ぼっくりを齧ったりはしないのでしょう。それほどおいしいものではないのか、それとも、労力の割には実入りが少なくて、おなかいっぱいにならないのか・・・。でも、厳しい寒さの中でいよいよ食べ物がなくなってくると、松ぼっくりを齧る。サバイバルをかけた、リスなりの必死の行動なんですね。
この海老フライ、冬の森で探せばいつでも見つかるかというと、そう簡単なものでもありません。ちゃんと海老フライ形になっているものは意外に少なくて、齧りかけて途中で放り出してしまったもののほうが圧倒的に多いのです。根気強いのと飽きっぽいのがいたり、器用なのと不器用なのがいたり、リスにも個性があるのでしょう。たまに形の整った美しい完成品を見つけると、腕のいい職人仕事を見たようで、なんだか嬉しくなってしまいます。逆に齧りかけ途中で放り出したものも、それはそれで愛敬があっていいものですが。
松ぼっくりというと、笠の開いたものを想像されるでしょうが、笠が開くのは陽に当たった時だけ。日陰の場所や夜間には閉じているのが普通です。この閉じた松ぼっくりを見た時、長年の疑問が氷解しました。パイナップルは「パイン」と「アップル」をつなげた言葉だと思いますが、なぜ「パイン」が含まれているのか・・・ずっと引っかかっていたのです。パイナップルは、笠を閉じた松ぽっくりの姿にそっくり。納得です。
一方、緑のない時季、冬の森に咲くバラの花のような松ぼっくりもあります。こちらは、リスのお食事用ではなくて、わが家のお飾り。一輪挿しに活けて、花のない季節の室内で咲いてもらいます。