春の顔
3月末、雪の溶けかかった庭の片隅で蕗の薹を見つけました。去年より10日早い顔出しです。冬将軍が長居して、3月になって何度も積雪に見舞われた今年。その分、寒風にさらされることが少なくて、蕗の薹の生育には好条件だったのかもしれません。行きつ戻りつ、はにかみながらやって来る春も、ようやく森の近くまで来たようです。今回は、そんな春の素顔をご紹介します。
森の春は、木の根元からやって来ます。雪深い地域にお住まいの方はよくご存知でしょうが、春が近づいてくると、まず木の根元あたりから輪を描くように雪が溶け、土が顔を出してくるのです。木の温もりが足元の雪を少しずつ溶かすためで、「木温(きおん)」という言葉があると聞きました。
蕗の薹のまわりも、同じように雪が溶けていきます。ひとつひとつの植物のエネルギーが周囲を温め、森全体に春に広がっていくのかもしれません。
雪を割って顔を出す蕗の薹は、まっ先に春の訪れを告げてくれる山菜。その苦味は、まさに早春の味です。早速、初物を天麩羅にしていただきました。
春の訪れは、富士山の雪からも見て取れます。真冬はクリスタルのように硬質な雪で固められていたのですが、この時季は生クリームをかけたような感じ。なんとなく緊張がほぐれて、富士山もホッとした表情に見えます。そして、富士山以外の山々は、遠目にはうっすらとピンク色。まだまだ裸木で、葉も蕾も花もつけてはいなのですが、膨らんだ木々の芽の色が山全体を薄紅に染めて見せるのでしょう。
標高の高いわが家周辺の森は、春の足どりもゆっくりですが、里の道の駅は、もうすっかり春の色。花の球根や苗、山採りの蕗の薹や行者にんにくなどの山菜も並び始め、賑やかです。