連載ブログ 富士山麓通信

すみれごはん

2012年05月30日

新緑が爆発するような勢いで森をおおい尽くすこの時季、足元には野のすみれが咲き乱れます。わが家の庭にも、濃淡さまざまなすみれがいっぱい。今年は特に豊作なので、例年よりちょっと多めに摘んで、すみれごはんに。食卓がすみれ色に染まりました。

「すみれご飯」のことを知ったのは、京都の家庭料理「おばんざい」を全国に知らしめた随筆家、大村しげさんの「京暮らし」という本の中でした。「まるでマリー・ローランサンの絵のような…ご飯にリボンをつけたみたい」と表現されています。きれいに仕上げるには繊細なテクニックを要求されるのかと思ったら、これが拍子抜けするほど簡単。薄い塩味で炊き上げたご飯に、洗って水気を切っておいたすみれを合わせるだけ。すみれさえあれば(普通はここが難関ですが…)、誰にでもできる簡単ご飯です。熱々のご飯にのせても色が変わらず、お弁当箱のご飯が冷めても色あせることなく、きれいなすみれ色のままでした。これといって、花の香りも味もしないのですが、春の野の空気を食べているような、そんな不思議な感じ。でも、ザルに入れたすみれをベランダに出して撮影していたら、蜜蜂が寄ってきたのには驚きました。人間には感じられないほどの香りも、ちゃんとキャッチしているのでしょう。

すみれご飯はクセが全くないので、色のきれいなご飯といった感じで食べられます。ご飯の後ろは、山菜のコゴミのお浸し。

毎年のように作る、すみれのお浸し。さっとゆがいて、三杯酢で和えました。

水を張ったボールにすみれを浮かべていたら、すっ飛んできた家猫。蜜蜂の嗅覚と同じ??

そしてこちらは、「すみれとたんぽぽのサラダ」です。味付けは胡麻油と塩だけというシンプルなサラダですが、すみれのおかげで、ちょっと華やかに仕上がりました。たんぽぽとレタスを手でちぎって胡麻油で和え、塩で味を調えて、すみれを散らすだけという簡単レシピ。地元の道の駅で買ったアイスプラントがあったので、それも加えてみました。

すみれを食べるというより、他の野菜の味を邪魔せずに、すみれで飾ったサラダ。

左:アイスプラントは、葉や茎に氷粒のような水泡が付いて凍ったように見えるところから付いた名前だとか。ほどよい塩味とわずかな酸味は、シンプルなサラダにぴったり。
右:東京から移住してきた有機農家の知人から分けてもらったハーブソルトで味付け。塩以外は、その農家で栽培したものです。

キャベツの塩麹漬けにも、すみれを散らしてみました。

すみれに似合う小さな花瓶に挿して、食卓に飾りました。

おやつには、すみれ入りのホットケーキを焼いてみました。生地の表面にすみれを飾り、その上から薄めの生地をかけて焼くだけ。今回はベーキングパウダーの量を間違えて、失敗作…。

おままごとのように作って、遊んで、楽しんだ一日でした。おままごとと違うのは、ちゃんとおなかに入ったこと。山で暮らしていればこそのぜいたくかもしれません。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    M.Tさん

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