山の幸、里の幸
残暑が長引いたせいでしょうか。今年は例年より秋の訪れが遅く、10月も半ばを過ぎて、やっと山栗が実を落とし始めました。その代わり、きのこなど他の食材たちと一緒に、一気に「実りの秋」が訪れた感じ。今回は山の幸と里の幸をご紹介しながら、田舎暮らしならではの口福をお裾分けします。
山栗の季節になると、そわそわして、なかなか仕事が手につきません。コツン、コロコロ 家の中に居ても、家の前の道路に山栗の落ちる音が聞こえるからです。都会の道路のように頻繁な往来はありませんが、それでも道路は道路。車が通れば、踏みつぶされてしまいます。せっかく実った命を無駄にしたくないから、せっせと栗拾いに精を出すことになります。
山に自生する山栗は栽培された栗に比べて実は小さいのですが、その分、味は濃厚。一度食べると、病みつきになります。皮むき作業が大変といえば大変ですが、頭をからっぽにしてひと粒ずつ皮をむく時間は、こころが落ち着くものです。茹でたり、栗ご飯にしたり、時には焚火の灰に埋めて焼き栗にも。ただしその時は、カチカチ山にならないように、少し切れ目を入れておきます。
一方、里のあちこちでは、さまざまな農産物が並んで、実りの秋を実感させてくれます。いずれも、都会のスーパーに比べると嘘のような値段。見るもの見るもの欲しくなって衝動買いしたら、ある日の買い物はこんなになってしまいました。
たった3人の家族で、さて、これをどう食べ尽くすか そんな課題を解決するために、休日の時間のほとんどを費やすことになります。ま、それが楽しみでもあるのですが。
道の駅の収穫祭では、軽トラックに山積みされた泥付き大根が、3本200円という破格値で売られていました。しかも、まな板からはみ出るほどの大きさです。こちらも、ついつい買ってしまいました。
買ったからには、なんとかしなければなりません。まずは、「やさい塾」で教わった大根ステーキにトライ。そして、芯まで赤いムラサキ大根と一緒に甘酢漬け。皮の部分はきんぴらにしました。
こんな衝動買いをする主婦がいるおかげで、家族は、ひたすら同じ食材を食べることになります。(旬を味わうという意味では、ごく自然であたりまえのことですが )せめて、目先を変えようと、今回は定番のお煮しめだけでなく、根菜と原木しいたけに自家製パンチェッタを少々加えて、洋風仕立てのスープにしてみました。焼きイモだけでは食べ切れなかったムラサキ芋も、このスープの中に。少量のパンチェッタ以外はすべて野菜ですが、それでも深い味わいのスープに仕上がりました。
右:根菜のスープ。材料は、大根、ごぼう、にんじん、蓮根、ムラサキ芋、玉ねぎ、モロッコいんげん、原木しいたけ、ミニトマト、ハヤト瓜と自家製パンチェッタ。
かぼちゃも、いつもは煮物や天麩羅にするのですが、今回は半切りにして中に詰め物をしてオーブンで焼いてみました。にんじんは、千切りにして、沖縄料理の「シリシリ」風に。
この時季、目にすると買わずにいられないのが、ざくろです。ひと粒ずつ種があって、食べるのは少々面倒ですが、このルビー色の魅力には抵抗できません。
「実りの秋」は、食の冬仕度を始める季節でもあります。長い冬に向けて、そろそろ保存食作りを、と気が急いてくるのです。多くの友人たちが楽しみにしてくれているのは、干し柿。その仕込みにかかるため、干し柿用の大きな渋柿、百匁柿(ひゃくめがき)を箱買いしました。そして、使い切れなかった大根は、さっと湯通しして天日干し。戻せばいつでも食べられる切り干し大根にします。長い長い冬は、これからです。