連載ブログ 富士山麓通信

山の幸、里の幸

2012年11月14日

残暑が長引いたせいでしょうか。今年は例年より秋の訪れが遅く、10月も半ばを過ぎて、やっと山栗が実を落とし始めました。その代わり、きのこなど他の食材たちと一緒に、一気に「実りの秋」が訪れた感じ。今回は山の幸と里の幸をご紹介しながら、田舎暮らしならではの口福をお裾分けします。

山栗の季節になると、そわそわして、なかなか仕事が手につきません。コツン、コロコロ…家の中に居ても、家の前の道路に山栗の落ちる音が聞こえるからです。都会の道路のように頻繁な往来はありませんが、それでも道路は道路。車が通れば、踏みつぶされてしまいます。せっかく実った命を無駄にしたくないから、せっせと栗拾いに精を出すことになります。

山栗で作った栗ご飯

山に自生する山栗は栽培された栗に比べて実は小さいのですが、その分、味は濃厚。一度食べると、病みつきになります。皮むき作業が大変といえば大変ですが、頭をからっぽにしてひと粒ずつ皮をむく時間は、こころが落ち着くものです。茹でたり、栗ご飯にしたり、時には焚火の灰に埋めて焼き栗にも。ただしその時は、カチカチ山にならないように、少し切れ目を入れておきます。

茹で栗。栗専用の皮むきもあります。

一方、里のあちこちでは、さまざまな農産物が並んで、実りの秋を実感させてくれます。いずれも、都会のスーパーに比べると嘘のような値段。見るもの見るもの欲しくなって衝動買いしたら、ある日の買い物はこんなになってしまいました。

ザルの奥、りんごの左隣はムラサキ大根。その手前はハヤト瓜。

たった3人の家族で、さて、これをどう食べ尽くすか…そんな課題を解決するために、休日の時間のほとんどを費やすことになります。ま、それが楽しみでもあるのですが。

道の駅の収穫祭では、軽トラックに山積みされた泥付き大根が、3本200円という破格値で売られていました。しかも、まな板からはみ出るほどの大きさです。こちらも、ついつい買ってしまいました。

買ったからには、なんとかしなければなりません。まずは、「やさい塾」で教わった大根ステーキにトライ。そして、芯まで赤いムラサキ大根と一緒に甘酢漬け。皮の部分はきんぴらにしました。

厚めに輪切りしてかために下ゆでした大根を、ステーキに。塩胡椒し、おろし大根をのせて、いただきます。

大根の甘酢漬け。ムラサキ大根の鮮やかな赤は、調味液の甘酢まで赤く染めてしまいます。

左:大根の皮の天日干し。生のときは赤いムラサキ大根が、少し干すとこんなムラサキ色に。右:大根の皮のきんぴら。天日干しすると、コリコリした食感です。

こんな衝動買いをする主婦がいるおかげで、家族は、ひたすら同じ食材を食べることになります。(旬を味わうという意味では、ごく自然であたりまえのことですが…)せめて、目先を変えようと、今回は定番のお煮しめだけでなく、根菜と原木しいたけに自家製パンチェッタを少々加えて、洋風仕立てのスープにしてみました。焼きイモだけでは食べ切れなかったムラサキ芋も、このスープの中に。少量のパンチェッタ以外はすべて野菜ですが、それでも深い味わいのスープに仕上がりました。

左:スープ用の野菜を、軽く天日干し。こうすると、うまみが違います。左上がハヤト瓜、右上はムラサキ芋。
右:根菜のスープ。材料は、大根、ごぼう、にんじん、蓮根、ムラサキ芋、玉ねぎ、モロッコいんげん、原木しいたけ、ミニトマト、ハヤト瓜と自家製パンチェッタ。

かぼちゃも、いつもは煮物や天麩羅にするのですが、今回は半切りにして中に詰め物をしてオーブンで焼いてみました。にんじんは、千切りにして、沖縄料理の「シリシリ」風に。

「坊っちゃんかぼちゃ」という小ぶりの品種です。玉ねぎ、インゲン、しいたけ、干しエビを炒めたものを詰めて、とろけるチーズをのせて焼きました。

にんじんのシリシリ。ツナ缶と溶き卵を加えて仕上げます。

この時季、目にすると買わずにいられないのが、ざくろです。ひと粒ずつ種があって、食べるのは少々面倒ですが、このルビー色の魅力には抵抗できません。

「実りの秋」は、食の冬仕度を始める季節でもあります。長い冬に向けて、そろそろ保存食作りを、と気が急いてくるのです。多くの友人たちが楽しみにしてくれているのは、干し柿。その仕込みにかかるため、干し柿用の大きな渋柿、百匁柿(ひゃくめがき)を箱買いしました。そして、使い切れなかった大根は、さっと湯通しして天日干し。戻せばいつでも食べられる切り干し大根にします。長い長い冬は、これからです。

干し柿用の百匁(ひゃくめ)柿。

切り干し大根製造中。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    M.Tさん

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