各国・各地で「千葉・鴨川 ─里山という「いのちの彫刻」─」
棚田の村へ入ると、まるで時計の針を戻していくように過去へとタイムトラベルしていきます。しかし、ここでの暮らしから見えるのは、過去を突き抜けた「未来の風景」です。

収穫祭

2014年11月05日

天候に恵まれた10月4日土曜日、鴨川棚田トラストの収穫祭を行いました。
収穫祭には、ありがたいことに我が家のまわりに車を駐車出来ない程たくさんの応募があったので、山の下にある長狭街道沿いの駐車場を集落の人からお借りしました。
参加者にはバス停と駐車場でイラストマップをお渡し、山の上にある我が家まで秋の里山をゆっくりと散歩しながら来てもらうことにしました。 収穫祭の会場は農道、棚田、みかん畑、炭焼き小屋、古民家と美しい里山集落全体です。

散策の途中、どんぐりや栗を拾ったり、バッタを捕まえたり、名のしれぬ野花や蝶に出会い、炭焼き小屋や棚田、みかん畑で、イラストマップにスタンプを押して、里山オリエンテーリングを楽しみながら古民家「ゆうぎつか」まで歩いて来て頂きました。

そして古民家に到着すると、無印良品のお菓子がプレゼントされました。
古民家では、かまどで炊いた新米のおにぎりと里山の野菜をたっぷり入れた豚汁をみんなで頂き、収穫祭をお祝いしました。
古民家の庭には、天然酵母パン「かまどの火」、自家焙煎コーヒーの「藁珈琲洞」、里海食堂FUSABUSA、鈴木鰹節店など、鴨川の人たちにも出店してもらいました。
また、鴨川市郷土資料館からお借りした鴨川の昔の暮らしを伝える古い写真と、今年の鴨川棚田トラストの写真を合わせたショートムービーをつくり、古民家で上映しました。

昼食後には、古民家の板の間で「レプラコーン」の渡辺恵さんと福田ゆきさんのチェロとコンサーティーナの演奏、Awa Belly Danceのエリさんといつも棚田トラストの撮影をしてくれる増田裕乃さんがお祝いのベリーダンスを踊ってくれました。

そして、今年から鴨川棚田トラストを共催してくれている株式会社良品計画の社長の金井政明さんも駆けつけて下さり、お祝いの言葉を頂きました。
開口一番、金井社長はこう言いました。
「みなさん、今、人類はヤバイのです。」
日本の食料問題、資源やエネルギー問題に触れ、経済はみんなが幸せになるためのツールであると言いました。そして、みなさんと一緒に新しい価値と文化を創っていきましょうと締めくくる金井さんは、世界的な企業のトップとして地球規模の視野を持つ素晴らしい発言でした。

金井さんは社長ですが全く偉そうにしないとても親しみやすい人で、里山でたくさんバッタを捕まえてきて、いたずらっ子のような目で、ニコニコと食べようぜと言って、さっと湯がいて油で炒めたバッタを持って来てくれました。
僕にとって初の昆虫食で、恐る恐るその茶色い小さなかたまりを口にすると、ポリポリと「里山のエビ」といった食感で、なかなか悪くありませんでした。

収穫祭の最後は、今年の鴨川棚田トラストのお米づくりに参加してくれたみなさん一人ひとりに、天水棚田でつくった無農薬有機栽培天日干しの長狭米の新米を感謝の気持を込めてお渡ししました。
こうやって都市に暮らす人々と共に、楽しくお米をつくることで、美しい里山の棚田が守られたことは、本当にありがたいことです。
今も生活を脅かされている人々が地球上にはたくさんいるにもかかわらず、収穫祭を平和に楽しむことができるこの「奇跡」に、感謝せずにはいられません。
そして、この里山でお米づくりを体験することは、自分たちの足元にある素晴らしい文化を発見し、日本人であることのアイデンティティを育むことに繋がるのではないかと思っています。

Photo by Yuka Watanabe

  • プロフィール 林良樹
    千葉・鴨川の里山に暮らし、「美しい村が美しい地球を創る」をテーマに、釜沼北棚田オーナー制、無印良品 鴨川里山トラスト、釜沼木炭生産組合、地域通貨あわマネーなど、人と自然、都会と田舎をつなぐ多様な活動を行っています。
    NPO法人うず 理事長

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