各国・各地で「千葉・鴨川 ─里山という「いのちの彫刻」─」
棚田の村へ入ると、まるで時計の針を戻していくように過去へとタイムトラベルしていきます。しかし、ここでの暮らしから見えるのは、過去を突き抜けた「未来の風景」です。

田んぼ×サーフィン×ディープ・エコロジー

2016年06月22日

6月4日土曜日、スエーデン生まれオーストラリア在住の環境活動家であり、シンガーソングライターのアンニャ・ライトのトークライブを古民家ゆうぎつかで開きました。

幼い頃から家族ぐるみで環境運動や平和運動に参加してきたアンニャは、自然破壊や戦争をくり返す人間というものに「人間であることが恥ずかしい」と感じていて、そんな早熟な彼女は子供の頃から社会を変革する活動家になることを決心していたそうです。1967年生まれというから僕と同世代ですが、子供の頃ノホホンと何も考えずに暮らしていた僕とは、月とスッポンです。
アンニャはマレーシアのサラワク州での森林保護運動で、先住民ペナン族の暮らす森が無残に破壊されている現状を、その最大の消費国であるバブル期の1980年代に日本へ伝えに来た時、東京で見た風景は「森の墓場」だと感じたそうです。
なぜならサラワク州の原生林で伐採された樹々は、コンクリートビルを建設する時に使用される使い捨ての型枠ベニア板になっていたからです。

地球の貴重な財産である原生林を守るため、アンニャの体を張った直接行動は、その国の政府や伐採する企業とぶつかり、時には投獄もされました。その優しくも激しいアンニャの生き様は、「しんしんとディープ・エコロジー」(共著/アンニャ・ライト+辻信一 大月書店)にて語られています。
マレーシア、日本、エクアドル、タスマニアと精力的に環境活動に取り組む中で、文化人類学者であり環境活動家の明治学院大学国際学部教授の辻信一さんと出会い、共に環境・文化NGOナマケモノ倶楽部を立ち上げ、スロー・スモール・シンプルを社会に浸透させるべく環境文化運動を起こしていきました。

「地球人」の心

アンニャは、真っ直ぐな瞳の美しい娘パチャと息子ヤニと共に鴨川の我が家へやって来ました。
娘の名前「Pacha(パチャ)」とはケチュア語で、大地、宇宙という意味があり、息子の名前「Yani(ヤニ)」はアボリジニの言葉で平和を意味します。
サーファーであるパチャは16歳未満でオーストラリア2位の腕前で、10才のヤニも素晴らしいサーファーでありミュージシャンであり、それぞれ自分のサーフボードを持ってこれから母親と一緒に、日本の地方をサーフトリップしながらトークライブの旅に出ます。

アンニャたち親子は、自分の内面から聴こえてくる「魂の声」に耳を傾けながら、自然体で生きている親子でした。彼女たちをみていると国境、人種、学歴、年収、家柄、階級、職業、肩書、所有物などにはもう意味を感じなくなります。
それぞれの育ってきた文化的なアイデンティティは持っていますが、心は自由な「地球人」なのです。

ディープ・エコロジー

アンニャは古民家ゆうぎつかに来ると、まるで帰ってきたみたいと太陽のようにまぶしく笑い、とてもリラックスしてくれました。環境活動家というと激しいイメージを持つかもしれませんが、アンニャはとても穏やかで、明るく優しい女性です。
アンニャはギターを爪弾き、地球への愛を親子で歌ってくれました。

地球はわたしのからだ
空気はわたしの息
水はわたしの血
火はわたしのスピリット

わたしは地球
わたしたちは自然と離れている存在ではないの
わたしたちそのものが自然であり、地球なの

アンニャは敵と見方という対立する否定的運動を超えるため、歌を通してディープ・エコロジーのメッセージを伝えてくれます。

ハートの交流会

アンニャのトークライブに、村の長老たちも聞きに来てくれました。
「いや~、いい話だったぺよ~。」
そしてトークライブ終了後、長老たちも含め参加者のみなさんと一緒に、里山で僕らが焼いている炭をつかってバーベキューの交流会を行いました。火を囲んで長老のこんぴらさんは房州弁で、アンニャは片言の日本語と英語で楽しく語り合い、棚田を守る長老と森を守るアンニャは言語を超え、ハートでつながりました。

その夜、お酒をご機嫌に飲んだ長老のこんぴらさんは、我が家に泊まっていくことにしました。夜中のションベンに起きたこんぴらさんは大勢の人が寝ている古民家の板の間で「おおっ、ここはどこだ!」と驚き、ここはゆうぎつかですよと僕は庭まで立ちションの案内をしました。
「あぁ、そうか・・・。俺は随分飲んだから、林さんちに泊まったんだったね。」
ホタルが飛ぶ古民家ゆうぎつかの庭で、こんぴらさんは夜空に向かって気持よく放尿しました。

まわりて、めぐる、いのちのわ

翌日5日の早朝、僕はアンニャたちと人生初のサーフィンをしました。
気が付くと僕の周りには、自然を愛し、お米をつくる多くのサーファーマー(サーファー+ファーマー)がいて、僕は友人のサーファーマーたちに教わりながら鴨川の波を楽しみました。

加茂川の最上流にある里山の棚田でお米をつくり、その里山の栄養分がたっぷり含まれた水が加茂川を流れて太平洋に注がれ、豊かな里海となり、その水はやがて雲となり、雨となり、再び里山に降り注ぎ、棚田を潤し、お米を実らせ、そして僕らのいのちを育んでくれます。
そのつながりにはどこも分断はなく、「まわりて、めぐる、いのちのわ」となります。
太平洋の大海原に浮かんで波にゆられていると、僕はまるで母親のお腹の中にいた時の胎児の記憶が蘇るようでした。
"わたしは地球"というアンニャの言葉を思い出します。
そう、僕ら自身が地球なんだ。

Love・Peace・Life

サーフィンから戻ると、釜沼北棚田オーナーの草刈りを行いました。
小雨の降るなかでしたが、約50名の参加者とやりきりました。

昼食は、集落の料理上手なおばあちゃん「しろうべい」さんや「こへいだ」さんが、美味しい郷土料理のまぜご飯をつくってくれ、みんなで美味しくいただきました。
昼食後、アンニャはみんなに「とべ、クリキンディ ~ハチドリの歌」を歌ってくれました。

とべ とべ クリキンディ とべ とべ クリキンディ
とべ とべ クリキンディ とべ とべ
わたしは わたしに できること あなたも あなたに できること
火を消すための ひとしずく いのちのための ひとしずく

田んぼとサーフィンとディープ・エコロジーな楽しい2日間でした。
Love・Peace・Lifeというアンニャのメッセージの余韻が、まだ心に残っています。

Photo by Yoshiki Hayashi

  • プロフィール 林良樹
    千葉・鴨川の里山に暮らし、「美しい村が美しい地球を創る」をテーマに、釜沼北棚田オーナー制、無印良品 鴨川里山トラスト、釜沼木炭生産組合、地域通貨あわマネーなど、人と自然、都会と田舎をつなぐ多様な活動を行っています。
    NPO法人うず 理事長

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