天国は雲の上にあるのではなく
11月17日土曜日は、「自然酒の会」の収穫祭を行いました。
数日前まで雨予報だったので天気が心配でしたが、当日は見事な秋晴れとなりました。
夏の草取りは異常気象による猛暑で断念し、秋の稲刈りはゲリラ豪雨や台風の影響でなかなか水が抜けず、天水棚田での稲作は今年も大変苦労しました。
気候変動は日常となり、世界中で自然災害が多発している状況で、日々お米を食べることができるのは当たり前ではないと思っています。
だからこそ自然界の営みに感謝し、僕らが生きている奇跡をみんなでお祝いました。
つながりに感謝
みんなで育てた無農薬・無化学肥料・天日干しの天水棚田米を蔵元寺田本家さんに送り、日本酒造りの原点といわれる「菩提生もと仕込み」で、今年も超美味しい自然酒「天水棚田」を醸してもらいました。
収穫祭の料理は「もみじの手」の守井美奈子さんが地元食材で美味しい発酵料理をつくってくれ、土間のテーブルにはズラリと大皿料理が並びました。
そして「有機米の会」同様に、安房の土で作陶する「あわ焼き」を研究する陶芸家の西山光太さんは、みんなが田んぼの土からつくったぐい呑を焼いて持って来てくれました。
お米も、お酒も、器も、同じ土から生まれているのは、世界でここだけだと思います。
このプロジェクトには造り酒屋、陶芸家、料理家など房総半島の素晴らしいクリエイターたち、お米づくりに通ってくれる都市住民たち、そして賛同してくれる地元住民や企業がいて、みんながつながることで実現しています。
この人と人とのつながりにも本当に感謝です。
笑顔、笑顔、笑顔
僕らは「マイぐい呑」に自然酒「天水棚田」をそそいで、お祝いの乾杯をしました。
そして持ちに待った自然酒「天水棚田」を一口飲むと、まるでリンゴジュースかワインのように甘くフルーティーな旨味がジワ~と口いっぱいに広がります。
「ええ~、これが日本酒なの~?」
「う、うまい!」
あまりの美味しさに驚きの歓声が上がります。
この独特の味覚は飲んでみないとわかりませんが、僕は日本酒の中で一番好きなお酒です。
美味しい発酵料理を味わいながら自然酒「天水棚田」を飲み交わし、僕らは楽しい会話に花を咲かせました。
目を合わすと誰もが微笑んでいました。
笑顔、笑顔、笑顔のハッピーなオーラに包まれた古民家「ゆうぎづか」は至福の時空となりました。
夢は叶う
昼食後は棚田のウッドデッキにて、念願だったTAWOO(タヲ)の和太鼓の演奏が行われました。
「自然酒の会」を始めた2015年に参加してくれた小崎洋さんは、それから鴨川に通ってくれるようになりました。
小崎さんは東京でIT関係の企業に務め、週末はサーフィンを楽しむライフスタイルを送っていましたが、そこに「農」が加わって「サーファーマー」となったのです。さらに昨年からは、我が家の下にあるNPO法人うずが借りているシェアハウスに一部屋借りて、毎週末は鴨川へ通う2地域居住を始めました。
そんな小崎さんはTAWOOで和太鼓を習い始め、いつかこの棚田のウッドデッキで演奏したいねと、僕と夢を語りあっていました。
そして、その夢は思ったより早く実現したのです。
ドラムマジック
ドドーンと、棚田のウッドデッキで打たれた和太鼓のサウンドは里山全体へ響き渡りました。
そのヴァイブレーションは、森と大地と空と僕らを共振させました。
20代の頃、インドを旅していた時にバラナシで出会った旅人は「これは、ぜひ読んだほうがいい」と言って渡してくれたのは、アメリカの伝説的なロックバンドであるグレイトフル・デッドのドラマーのミッキー・ハートが書いた「ドラムマジック ~リズム宇宙への旅~」という本でした。
その本には、"古代から太鼓は人と神をつなぐ媒体であり、そのサウンドは心身を浄化し、生きる活力を与える魔法の力を持っている"と書かれていました。
TAWOOの太鼓は、まさにドラムマジックでした。
美しい1日
ライブの後、TAWOOは和太鼓を楽しむワークショップを行ってくれました。
僕は素人ですがTAWOOにいざなわれるままに、バチを握って大きな太鼓を打っていると、ドラム音の宇宙に引きこまれていきました。
やがて、みんなの音は一つになり、時には嵐のようにうなり、時には水のように流れ、時には子どものように遊び、太鼓は僕らの魂を解放していきました。
美味しいお酒と料理、最高の音楽、心地よい秋の晴天、美しい里山の景色、素晴らしい人々、みんなの笑顔、収穫祭は夢のように美しい1日で、一瞬一瞬が輝き、まるで天国にいるようでした。
"天国は雲の上にあるのではなく地上に創れる"のかも知れません。
Photo by Seiko Tachibana・Yoshiki Hayashi