各国・各地で「日南海岸 ─美しい神話の国から─」

4代に渡り地域に愛され続ける、味わい深く「甘い」味噌

2014年05月21日

宮崎・日南海岸はハワイのような気候と景色の中に、日本特有の神話が根付いている不思議な魅力にあふれる地域です。真っ青な空の下、夏は立っているだけでぶわっと汗がにじみ出るような暑さがあります。

気候も景色も少し、日本離れしている日南海岸。実は、食文化も他の地域とは違う、独特な魅力にあふれています。初めて食べる人は少しびっくりするかもしれませんが、日南海岸の食文化は味わい深く「甘い」のです。

今回は日南海岸で愛される、昭和元年創業の「松尾醸造場」4代目の松尾定直さんのもとを訪れました。松尾醸造場が、約1世紀に渡って「ヤママツ」という愛称で親しまれ、地域の方々に長く愛され続けた味わい深く「甘い」味噌の秘密を探っていきたいと思います。

麹の割合が多く、塩分濃度が低いといわれる宮崎の味噌。日南海岸のハワイのような気候が、味噌作りにとても重要な菌の発酵にも独特な影響を与えるらしいのです。どうやら、日南海岸の食卓の美味しさの秘密はこの「甘さ」にありそうです。

長い歴史の積み重ねが生み出す、上質な味噌の甘み

「仕込みの時は、朝も早いし、仕上げの時期になると夜中は目が離せんね」。先代が味噌の製造を始めてから約90年。定直さんは、昨年引退した3代目の正三郎さんと試行錯誤しながら、4代目として20年もの間、毎日丁寧に味噌作りを行っています。

早速単刀直入に、僕がずっと知りたかった、味わい深く「甘い」秘密を聞いてみました。

「九州は、食べ物に砂糖をよく使用する"砂糖文化"でもあるんですよ。江戸時代に遡ると、オランダとの貿易の中で、九州は砂糖に触れる機会が他の地域より多かったんやと思います。九州は、昔からサトウキビから砂糖を作る技術も持っていましたし、それが『宮崎の味噌は甘い』という地域性に繋がっていったっちゃないかな」。

松尾さんは、そう推測します。

「その地域性もあるんやろうけど、うちの味噌が無添加でも甘口になるのは、塩分が少ないのと、麹の割合が高いからやと思います」。

なるほど、なるほど。昔から「甘さ」と深い関わりがあった九州地方だからこそ、砂糖を使わずとも味噌が甘口になるのは、いたって自然な成り行きなのかもしれません。

「大抵の麹は、麦の外に真っ白い菌がついたら奇麗で、美味しくなると言われているっちゃけど、うちの麹は、麦の中まで深く透過するような強い菌を使っているから、より甘口に仕上がるっちゃわ」。

九州の中でも、特に温暖な日南海岸だからこそ出せる味がある、と定直さんは言います。砂糖文化と温暖な気候から生まれた、味わい深く「甘い」味噌は、日南海岸の食卓には欠かせない地元の味。

今回はいつもより甘いっちゃない?

晴れの日もあれば、雨の日もある。その時の気候によって、松尾さんは作業の日程や行程を組み替えながら味わい深く「甘い」味噌をつくっています。もちろん、良い意味で手作りならではの違いもうまれてきます。地元の朝市に出店を初めて25年程がたちました。「今回はいつもより甘いっちゃない?」毎週こんなやりとりを繰り返しながら、地元の方々と一緒になって日南海岸の豊かな味わい深く「甘い」魅力を育んでいるそうです。

うちの無添加味噌は美味いよ!!

県外のファンもとても多い松尾さんの味噌。

「味噌を手に取ってくれた方が、実際に宮崎に足を運んでくれたり、そういった可能性が広がれば嬉しいね。県外からも味噌の材料の調達は出来るっちゃけど、宮崎産にこだわりたいとよね」。
日本の各地の人たちに、宮崎の農産物を使った加工品が少しでも多くの人に味わってもらえる機会があるというのは、とても嬉しいことだと、定直さんは言います。

「自分でいうのもなんやけど、うちの無添加味噌は美味いよ!」
そう、最後に照れながら話してくれました。

約1世紀に渡り地域の方々に愛され、砂糖文化と温暖な気候から生まれた、松尾醸造場の歴史ある味わい深く「甘い」味噌。ぜひ、一度味わって欲しい、日南海岸の大切な食文化です。

お知らせ

Found MUJI Marketにて今回ご紹介した「あわせ味噌」を6月に販売の予定です。

  • プロフィール 久志尚太郎
    音楽やアート、旅や食が好きです。
    高校時代のアメリカ留学を経て、20代前半に世界25カ国放浪。
    25歳から宮崎県串間市で人口1000人高齢化50%の村での田舎暮らしを経験し、現在は東京を拠点に都会と田舎、世界と日本を行ったり来たりしています。

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