各国・各地で「日南海岸 ─美しい神話の国から─」

ミネラルを多く含んだ地下水とこだわりの製法で作られた、『旬』をお届け

2014年08月27日

宮崎県の日南市は、同じ市内でも自動車を30分も走らせると、市街から海へ山へとあっというまに景色が変わってしまうほど変化に富んだ地形です。そんな場所だから、採れる野菜も自然とバラエティ豊かになるよう。

海に近い平らな土地には、自慢のお米と果実、海産物を扱う市場。雄大な山々に囲まれた土地には、信州伝統の野菜を扱う工場があります。今回は、日南海岸で黒潮市場を営む古澤幸弘さん。そして日南市北郷町にある、南信漬物の宮崎工場の工場長である倉岡さんのお話。

マンゴーも扱うお米屋さんの誕生

幸弘さんの家は、祖父の代から続いている米穀屋さん。精米所(ライスセンター)も運営していて、生産以外は販売まで一貫して手がけています。早期米が多い日南市で稲刈りが始まるのは、7月下旬。

「初めて宮崎完熟マンゴーを食べたとき、『こんなに美味しいものは食べた事がない!』と感動してしまったんですよ」。これは誰に贈ってもよろこばれる商品だと感じた幸弘さんは、今でこそ有名になったコシヒカリと宮崎マンゴーをブレイク前から着々と育ててきました。

「大学生になり地元を離れて親のありがたみを感じられるようになってから、気持ちが変わったように思います」。田舎に帰って来て、手伝って、人と接する機会がある。ご両親の忙しく働く姿や優しい農家さんとの付き合いを経て、幸弘さんにとって家業は「嫌いではない」から、「やっぱりいいな」と思えるようになったのだとか。そんな矢先、幸弘さんが28才の時にお父様が亡くなり、これは自分がやらなければと再度決意を新たにしたのだそう。それからもう、26年が経ちます。

最近は4、5時間しか寝られない程に忙しく、徹夜していることもあるそうですが、地域の人のためにやりたいという部分が大きいから頑張れるのだと幸弘さんは笑います。「実はウチが、地域で頼りにされているんだと感じられるので、地域のみなさんとの触れ合いを大切にしています」。

おいしいお米のためにあみだした栽培法

黒潮市場で扱うお米は、富山県の原種で有機肥料しか使わず、天然塩をまいてつくった新米コシヒカリ。「農家さんの所にしょっちゅう顔を出して、味もちゃんと確かめています」。日本で一番早い新米なので8月の旧盆には間に合います。

「やっぱり味が良くないといけないと思っています。だからこそ、コシヒカリは稲と稲の株間を通常よりもしっかりとって植えるのです」。一般的には1つの苗が多いし間隔が狭い。しかし、収穫量が減っても株間を空ける事によって風通しを良く光があたるようにして、とにかく病気が起こらないように工夫をするのだそう。有機栽培の取り組みは、この黒潮市場がオープンする前から20年以上続けられていました。幸弘さん自身が、「いいな」と思った作り方を実践してくれる農家さんを探して、それを実際に食べる。その上で美味しいと思う方とだけ契約を結ぶのだそう。

「お米をはじめとする宮崎の良いものを扱い、農家さんの役に立てるような仕事をしながら業務を拡張して行きたいと考えています」。なにより安全なお米を食べたい方へ。幸弘さんは今日も農家さんと協力して新米の香りがする宮崎のお米を広めるために活動しています。

どうせなら、つくっちゃおう

「全国に自分たちの野沢菜漬けを販売したい」。そう思った倉岡さんたちは、昭和50年頃長野県の飯田市に本社を構えました。雪の多い長野では、冬は野沢菜が育たないため宮崎で野沢菜を育て、長野で加工していたのだそう。しかし、倉岡さんたちは当時の宮崎県北郷町(現在は南郷町と合併)時代の町長から「ぜひ北郷に来て欲しい」とのラブコールを頂いたことがきっかけで、日南に工場と事務所を構えたのだそう。この工場は、今年で34年目を迎えます。今では従業員も、地元の方々を優先的に雇用しています。工場設立当初から現在まで働いてくださっているベテランの方が何名もいるそう。

倉岡工場長は、北郷生まれの北郷育ち。南信漬物宮崎工場の設立当初から働いています。「前の工場長が定年になって、それを引き継ぐ形で就任しました」。名義上は工場長ですが、営業もこなしますと苦笑い。工場のそばに家を構えていて、休みの日は大汗をかきながら家庭菜園を行ったり、梅干しやらっきょうを作っていたりするのだそう。

こだわるのは、素材と製法そして安全性

干し大根の産地としても有名な宮崎。倉岡さんたちは「割り干し大根一夜漬け」も製品化しています。「青首大根を使用し、一晩だけ特別な乾燥機で乾燥させて、ソフトな歯触りに仕上げています」。それが甘酢タイプに味付けしてあって、噛んでみるとコリコリして食べやすい。使用する酢も本物の醸造酢を使用しているので、市販品とはまるで別物の味わいが口に広がります。和・洋・中のどんな料理にも合い、思わずビールが飲みたくなってしまう。

味や工程についてこだわりの強い商品ですが、原材料にもそれを感じ取ることができます。「食の安心、安全は基本になっていますから、工場の社員共々、その意識を忘れず持ち続けています」。この工場で使用するのは100%契約栽培の野沢菜や、ミネラルを多く含んだ地下水。契約栽培のみということは、生産者と直接顔をあわせて収穫の時期等を打ち合わせたり、栽培状況を毎日確認できるということ。「生産者と直に接することで顔が見え、お互いに安心できます。地下水は工場の近くの水源から引かれていて、常に目の届く状態です」。

海に近い平らな土地と雄大な山々に囲まれた土地。地形は違えど、2つの場所で共有されていることは、「おいしいものを届けたい」という純粋な気持ち。そして「生産者から始まる、お客様とのコミュニケーション」です。こだわりのお米と、こだわりのお漬物。食卓にそろえて味わって欲しい、宮崎からの贈り物です。

  • プロフィール 久志尚太郎
    音楽やアート、旅や食が好きです。
    高校時代のアメリカ留学を経て、20代前半に世界25カ国放浪。
    25歳から宮崎県串間市で人口1000人高齢化50%の村での田舎暮らしを経験し、現在は東京を拠点に都会と田舎、世界と日本を行ったり来たりしています。

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