各国・各地で「日南海岸 ─美しい神話の国から─」

地方再生のモデルは人口5万人の宮崎県日南市から生まれる!?

2015年05月20日

地域の人が主導となって、街全体が盛り上がっている宮崎県日南市。5万人の小さな街が、いま大きく変わろうとしています。
きっかけは3年前、当時33歳で出馬した現市長、﨑田恭平さんの当選です。日本で2番目に若い市長となった﨑田さんは、「民間から人材を募り、行政マンとは違う視点からチャレンジをしていきたい」という公約を掲げていました。そこで白羽の矢が立ったのが、今回お話をお伺いする田鹿倫基さんです。

もともと危機感があって、いつか街づくりをしたいと思っていた

﨑田市長の右腕であり、民間人として日南市のマーケティング専門官として勤務する田鹿さん。現在は専門官として、日南市全体のマーケティング業務を担っています。﨑田市長の誘いを受けて、現在の仕事に就いた田鹿さん。「漠然と、宮崎に戻って街づくりをしたいとは考えていたんです。これはちょうどいい機会だと思いました」と、話を聞かせてくれました。

田鹿さんがこの役職についたのは、30歳のころ。もっと経験を積んで、35歳ころでと考えていたそうなのですが、「あと5年で自分が成長するスピードより、あと5年のうちに地域が衰退するスピードのほうが早いのではないか」と思うようになったのだと言います。再生の余地があるタイミングで戻ったほうがいい。田鹿さんは﨑田市長の当選を機に、前倒しで日南市の街づくりへ参加したのでした。

学生時代から街づくりには興味があったという田鹿さん。当時県庁職員だった﨑田さんと出会い、リクルートに就職し、仕事の傍らで宮崎県にIターン・Uターンする人を探そうと「わけもんフォーラム」を始めます。人材のマッチングに繋がればとはじめた活動は、およそ2年。

その活動後、海外へ転職してインターネットの広告代理店に勤めていた頃、崎田さんが市長に当選したという知らせが届きます。そしてしばらくして「一緒に日南市の街づくりをしようという話になって……」と振り返る田鹿さん。
日南市民が抱える危機感が若い市長を産み、新しい風が流れ始めます。今日南市では、若い世代が主体的に動き、それを上の世代が支える。そんな、大きなうねりが生まれようとしています。

日南市の雇用は次のステップへ

田鹿さんの任期は約4年。人口の流出を止めることが彼の目標でした。人口流出の原因である「仕事がない」という現状をどうにかするため田鹿さんは奔走します。「人口流出を止めるのは大きな課題でした。特に若者を惹きつけて、流出を止めなければならなかった」。観光客に沢山きてもらって、日南市の農産物を市外の人に買ってもらうというような、日南市に仕事を持ってくる方法などを作り出し日南市に雇用を作り始めました。そのような施策の効果があってか、いまでは有効求人倍率が1,1倍を超えるまでになった日南市。「仕事がない」から、なんと「仕事がたくさんあって人が足りない」という状態にまで変わってきました。

しかし、それで取り組むべき課題が変わったのだと田鹿さんは言います。「今はこれ以上雇用を作っても、今度はそこで働いてくれる人がいない状態です。増やすのではなく、今ある仕事のマッチングをきちんと行うことが大切になってきました」。実際、ハローワークにはいろんな求人が出ていますが、あまり応募が集まらない。仕事内容や待遇面から、日南市よりも宮崎市内や福岡や東京で仕事を探す人が多いのです。そこで田鹿さんは、2つのプランを用意していました。

1:今ある仕事をもっと魅力的に見せ、求職者にとって、面白い仕事だと伝わるようにすること。
2:若者自身が働きたいと思える仕事を、新たにつくること。

やみくもに雇用を増やすのではなく、マッチングまでを考えた雇用の創出や、求人に合った形態を考えていくのが、これからの田鹿さんの仕事です。ライフスタイルにあった働き方にも対応して、新しい働き方を提供できるようにする取り組みもあります。

日南市と絡むと何か面白そう! と思ってもらいたい

日南市で活動をする田鹿さんは、最近市民の人や市役所の人から「雰囲気が変わってきた」、「新しいことにチャレンジしようっていう空気が生まれた」というような嬉しい声をよく耳にするようになったと言います。「市長が若くなって、若くてもどんどん地域の活動に出て行ってもいいんだ!」ということも若者に浸透しつつあるそうで、今までどこにいたかわからなかった若い人がたくさん現れた、と田鹿さんも手応えを感じているのだそう。

「日南を好きという人に喜んでもらえる仕事なので、とてもやりがいがあるんです」人口5万人のこの街で住みたいと思っている人が、次の世代に引き継いでいけるような地域にしたい。だから流出している人たちが戻ってくる。「新たに住みたいと思ってもらう人も増やしていくためにも、日南市を盛り上げていく活動を続けていきたいですね」と、意気込みを聞かせて下さいました。

  • 田鹿 倫基氏 日南市マーケティング専門官
    [関連サイト] 日南市ホームページ
    1984年生まれ。宮崎大学在学中に上海交通大学に留学し、上海で人材会社や飲食店の立ち上げのインターンシップを経験。大学を卒業後、㈱リクルートに入社し事業開発室に配属されインターネット広告の新規事業の立ち上げを行う。入社半年後にはリクルートと電通のジョイントベンチャーである㈱ブログウォッチャーも兼務。その後、中国の広告会社、爱德威广告上海有限公司に転職し、中国人スタッフとともに北京事務所の立ち上げを行う。2013年からは宮崎県日南市のマーケティング専門官として着任し、地域のマーケティング事業を行う。ベンチャー企業との協業事業や、農林水産業の振興、日南市全体のPR、マーケティング業務を担っている。
  • プロフィール 久志尚太郎
    音楽やアート、旅や食が好きです。
    高校時代のアメリカ留学を経て、20代前半に世界25カ国放浪。
    25歳から宮崎県串間市で人口1000人高齢化50%の村での田舎暮らしを経験し、現在は東京を拠点に都会と田舎、世界と日本を行ったり来たりしています。

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