各国・各地で「瀬戸内・小豆島 ─日本の中の、ラテン─」

日本の中の、ラテン

2014年04月02日

オリーブの街路樹に、穏やかな青い海。カラッとした日ざしと澄んだ空気。どこかスペインやイタリアを彷彿とさせるこの島のラテンな空気は、一瞬で人々を虜にします。すれ違う島民たちの、どことなく楽しげな表情を見ていると、甘くて美しい島暮らしに思いを巡らせてしまう。ぼーっと海を眺めているだけで満たされた気持ちになるこの島を、嫌いになる人なんていないでしょ。それが、瀬戸内海に浮かぶ小豆島(香川県)。

恵まれた土地が育む幸せな空気

高松からも岡山からも、フェリーで1時間ほど。便数も多くてアクセスは良いけれど、フェリーという移動手段には、旅っぽいワクワク感がもれなくついてきます。瀬戸内海の穏やかな海は、地中海のそれと似ていて、心を落ち着かせてくれる。そうそう、太陽の感じだってやっぱりラテンです。

島には、美しい海だけでなく、標高817mと高くそびえる星ヶ城が見るものを圧倒し、そこからは大渓谷、寒霞渓の姿が現れます。山は太陽熱を吸収しながら上昇気流を生み出し、独特の暖かく乾いた風をつくる。そして、その風が醤油や手延べ素麺などの特産物をおいしくする決め手にもなっているのです。

贅沢な時間と手土産

島の人たちのウェルカムな雰囲気は、昔から海上交通が発達したため人の出入りが多かったことからくるのかもしれませんが、それにしても「食の豊かさ」は、この島の人々の雰囲気や暮らしぶりを特異なものにしているよう。

至る所でたわわに実る果樹や野菜に始まり、見当たらないファストフード店。そして何より、400年の歴史を持つ醤油や素麺がこの島の誇りです。脈々と受け継がれている手間ひまかけた製法と菌たちで、絶品醤油をつくる醤油蔵。今ではここ小豆島だけと言われる天日干しで、驚くほどコシのある手延べ素麺を丁寧につくってきた素麺屋など、ため息が出るほどにこだわりのある職人たちがたくさんいます。さらにうらやましいのは、その職人さんが、島の食卓に、そして身近な人の喜びに直結しているところ。

町おこしを仕事にする男性のある日の食卓には、オリーブ農家さんと素麺屋さんがそれぞれ作りたてのプロダクトを持って訪れていました。最高に贅沢な手土産を携え、リスペクトし合う仲間が集う、「つくり手と食べ手が一緒に囲む食卓」は、美しく、しかし力強く現代の食の在り方について心に訴えてきます。

小豆島の暮らしと食と地域を見つめる

これからの田舎と都会 瀬戸内・小豆島では、小豆島の暮らしと食と地域をみつめ、四季折々の魅力、こだわりを持ちつつ自然体で素材と向き合う職人さんたちの暮らしをお伝えしていきます。1年を通して継続的にみつめることで、小豆島の魅力をひもとき、地域の未来をみなさんと一緒に考えていきたいと思います。おたのしみに。

  • プロフィール 中村優
    台所研究家。料理は国籍や年齢を超えて人を笑顔にするとの信念のもと、家庭料理を学びながら世界を放浪旅した後、料理・編集の素敵な師匠たちに弟子入り。最近は、ロックなおばあちゃんたちのクリエイティブレシピを世界中で集めている。

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