サンバとショーロ
今回の制作については、J-WAVEの長寿番組「サウジ・サウダージ」の音楽プロデューサー中原仁さんにご参加願った。その選曲センスの良さと中南米音楽第一人者としての定評を持つ中原さん、実はBGM3シチリアの時もご参加いただいている。今回のBGM制作は初期のサンバを代表する作曲家、歌手、ノエル・ローザーの楽曲を中心にモダンなアレンジとブラジルらしいサウンドで、アルバム構成にしたいとの思いがあり、この要望を実現できる数少ない協力者として中原さんにお願いすることにした。今回はプロジェクト・マネージャーとしてご参加いただき、ライナーノーツを書いてくださった。そのライナーノーツから引用させていただく。
サンバ発祥の地Pedra do salでの中原仁さん
ブラジルがポルトガルから独立して以降、約140年にわたって首都の役割をつとめた大西洋沿いの都市、リオデジャネイロ。首都がブラジリアに移り、経済の中心地がサンパウロに移った現在も、ブラジル文化の中心地であり続けている。
リオを訪れた人は誰でもまず、その圧倒的な風景に目を見張ることだろう。世界屈指の観光地であるコパカバーナ、ボサノヴァの名曲の舞台となったイパネマなどの海岸。その周囲には、砂糖パンの山と呼ばれるパォン・ヂ・アスーカル、頂上にキリスト像が両手を広げて立つコルコヴァードなど、奇岩の丘と山。そして緑あふれる広大な森林。都会でありながら、手を伸ばせばすぐ大自然とコンタクトできる土地だ。
リオを抱くように立つ、コルコヴァードのキリスト像
うらやましいぐらい恵まれた環境の中で生活しているカリオカ(リオっ子)は、多民族国家ブラジルの中で最も開放的な気質の持ち主。人生を楽しむ術を心得ていて、好奇心が旺盛、楽しいことのためには努力を惜しまない。
そんなリオの風土とカリオカの気質が、豊かな音楽文化を育んできた。19世紀後半のリオで誕生したブラジル最古のアーバン・ポピュラー音楽が、ショーロ(Choro)。
ショーロ愛好家達の演奏会
ルーツはヨーロッパからの移民が持ちこんだサロン・ミュージックで、ギター、カヴァキーニョ(ウクレレの兄弟)、バンドリン(ブラジル産マンドリン)などの弦楽器のアンサンブルを軸とする、基本的にはインストゥルメンタルの音楽である。
さまざまな楽器を持ち寄り演奏を披露する。
20世紀に入り、リオに住むアフリカ系ブラジル人の間からサンバが生まれた。ショーロの中にもサンバのリズムが入り、ショーロのミュージシャンがサンバの歌手のバックをつとめるなど、ふたつの音楽は密接に結びつきながら発展してきた。とくにショーロには、ミュージシャンが自分たちの楽しみのために演奏するという側面があり、華やかなショー・ビジネスから離れたところでさまざまな音楽を支えてきた。
サンバは、日本ではリオのカーニヴァルで繰り広げられる絢爛豪華なパレードのイメージでとらえられがちが、たんなるお祭りのためのお囃子ではない。リオの人々の日常生活に根ざし、喜怒哀楽の素直な感情、カリオカ特有のユーモアや風刺などを映し出す、鏡のような音楽である。また、アフリカ系ブラジル人によってもたらされた音楽ながら、ヨーロッパ系ブラジル人も早い時期からサンバにかかわっていた。
(著者:中原仁・BGM13ライナーノーツより抜粋)
写真は音楽大学の構内に、ショーロを演奏するために集まった愛好家達の集り。このような催しが度々行われている。伝統音楽とは図書館に収蔵される資料ではなく、さらなる進化告げるものLiving Tradition(今を生き続ける伝統)であることを実感する光景でした。
音楽の旅ですので、皆さんにお楽しみいただきたいとMUJI BGM13の音と現地で撮影をしてきた写真を使用し、スライドショーを作成いたしました。このBlogの右上に写真アイコンがありますのでクリックしてください。YouTubeでご覧いただくことが出来ます。
リオデジャネイロ気鋭のミュージシャンによる音楽とイパネマ、コパカバーナ海岸の風景をお楽しみください。(5分ほどございます)
撮影:藤岡直樹氏、他