連載ブログ 音をたずねて

タンゲリア(タンゴ・バー) Almacen

2011年10月05日

このお店は、とても有名ですのでタンゴ好きの皆さんはすでにご存じだと思います。
タンゴがショーとして初めて公演されたのがここアルマセン。現地でタンゲリアと呼ばれるタンゴ・バーです。実はそんなことも知らずにブエノスアイレスに来た私に、タンゴ音楽を収録するならここを見なくてはいけないとブエノスアイレス生まれの友人に連れて行かれた場所でした。無理して行ってとても良い経験ができたことを彼に感謝しています。

アルマセンの客席

撮影のため事前に見学させていただいた時の誰もいない客席です。長い歴史の中で選ばれておかれたテーブルやイスの位置。客席自体が演出要素になっているような迫力のある素敵な空間でした。

その時のショーです。

バンドネオン

クライマックス

出演者全員でご挨拶。

ちょうど良い広さで出演者と観客の一体感が楽しめる良いホールでした。
建築家やインテリアデザイナーでなく、タンゴが好きな人がつくり上げてきたと思われる空間は、見る側にとってとても気持ちの良い物でした。狭いステージを十分に使いくり広げられるショーは、アルゼンチン・タンゴのメッカとしての実力とサービス精神に溢れていました。素晴らしくて、あっという間に終わってしまったという感覚でしたが十分な余韻を与えてくれました。出演者は有名な方達だろうと思いますが、私には知識がなくキャストの名前もわかりませんでしたが、すばらしさは伝わりました。予備知識がなかっただけ余計に感動が大きかったようにも思います。まさにライブ・パフォーマンスの良さだったと思います。

楽屋口も素敵です。多くのスター達が出入りしたのだろうと想像すると、思わずサインをもらいに並びたくなります。

珍しいアルマセンの切手シート

アルマセンでショーを見て、ブエノスアイレスの人々のタンゴに対しての思いが伝わってきたように思いました。この切手もその思いの表れのように思います。一枚欲しかったけれど今は売っていないようでした。

ショーを見ながら日本の下北沢演劇のメッカ、下北沢本多劇場の事を思い出しました。本多劇場は日本で唯一個人のオーナーによる劇場です。オーナーの本多さんはもともと俳優でしたが、他のビジネスで得た私財をなげうって演劇のため、俳優のための小屋を創り下北沢演劇発展のために活動されてきました。
最近は息子に経営を譲り、ご本人はプロデューサー、役者として活動されています。
近年日本では商業施設の一部としての民間ホールや地方自治体がつくった公共用ホールなど数多くがありますが、形だけ整えたものが多いように思います。それはブッキング・メーカーと呼ばれる専門の公演企画者のいないホールの多さに現れます。ホールはホールがあるから公演が生まれるのではなく、演じる人がいて、見る人がいれば、野原でも会場にはなります。アルマセンのステージを見て、つくづく文化の違いを感じてしまいました。思いのない小屋はただの箱でしかありません。機会がありましたら是非、下北沢演劇、本多劇場をご覧になることをお奨めします。ライブの楽しさと小屋の役割が詰まっています。そしてもし機会がありましたらアルマセンも訪ねてみることをお奨めします。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    Y.Iさん

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