連載ブログ 音をたずねて

ダブリンは美味しい

2011年12月14日

レコーディングで海外に行ったときはいつもほとんど時間がないので、食事は早い・安い・うまいが一番と思っています。ただ民族音楽を収録する関係で、できるだけ地元料理を食べるように心がけています。その中でとても印象に残ったのが7年前アイルランドに滞在したときの食事です。なにを食べても味がしないのです。スープは野菜の煮汁のようにダシの味、うまみがほとんど感じられませんでした。レストランによく置いてある胡椒と塩の意味が理解できた初めての経験でした。スタッフそれぞれが自分流に味付けをしたりして過ごしました。ある時、時間がなく泊まったホテルのメインダイニングで食事をしなければならなかったときは全員がコンソメスープを頼みました。コンソメスープは肉からスープを作りますので、これなら味がするだろうと皆期待をしていました。ところが一口食べたとき、全員のスプーンが止まりました。こんどは喉を通らないほど塩辛かったのです。飽和食塩水のようで、味がしたのかしないのかもわからないほどでした。それ以来、ほとんどの食事は仕方なしにサンドイッチ、チャイニーズやコリアン・レストランでするようになってしまいました。そのような中でも不思議とホテルの朝のプレートだけはとても美味しく、毎日同じ料理でも食べ飽きることはありませんでした。3食これでも良いと思ったほどでした。特にハムが美味しく、塩辛いのですが塩鮭に似てとても芳醇な味がしました。そしてパンとバター、紅茶も日本ではお目にかかれないほど美味しいものでとても助かりました。

ほぼ毎朝食べていたホテルの朝食プレート

いつでも美味しいホテルの朝食

今回初めて泊まったグレンダーロッホのホテルの朝食も期待に違わず、美味しい朝食でした。朝食以外の食事は期待しないでデリのテイクアウトでも良いつもりでした。ところがなにげなく入ったダブリン市内のレストランで食べたランチがとても美味しく驚いてしまいました。

ダブリン市内のレストランのランチ

そこは地元の人が来るような、街のどこにでもあるようなレストランでした。盛りつけも美しく工夫されていました。さっそくレストランの場所と、電話番号をチェックしてスタジオに戻りました。このランチ以外の食事はスタジオのそばのデリでサンドイッチを買ってくる生活でしたが、このサンドイッチを売っているお店が、また美味しいお店でした。自家製の総菜を好きなようにパンに挟んでサンドイッチにしてくれるスタイルですがとても丁寧で、おしゃれなお店でした。スープも何種類かおいてあり、美味しいスープでした。日替わりになっていてほとんど毎日お世話になっておりました。

ムール貝

撮影隊のレストラン巡り

撮影隊はレコーディング隊と別行動をしていますので、街で食事をする機会が多くなります。案の定あちらこちらのレストランで食事をしてきたようです。彼らにアイルランドの食事は圧倒的にこの七年で変化しているのではないかと聞きましたら、彼らも同じ感想でした。彼らの食べたものを紹介します。

ポテトの上にチキンのフライとキノコ、下にはマッシュポット

スモークサーモンのサラダ

ラム肉のサラダ

どれをとっても美味しかったようです。この七年間の間にバブル期があり、アイルランドの食事事情も大きく変わったのでしょう。アイルランドでは野菜はほとんど輸入に頼っており、国内では少量しか作られていないとのことでした。過去において大きな飢饉があった、自然環境のきびしいアイルランド。食事については仕方がないと思っていましたが、この変貌に驚きました。

地元一番人気のアイリッシュ・レストラン

レコーディングの最終日に我々レコーディングチームもその変貌を確認しようと、エンジニアのキーランに、彼の推薦する地元料理のお店を教えてもらいました。2軒推薦を受けたのですが、1軒は少し贅沢過ぎるので、庶民的なパブ・レストラン101タルボットに行きました。急な階段を上った店は簡素でそれほど大きくない店内ですが、お客さんで一杯でした。

ラムのブラウンソース煮込みポテト添え

仔牛のブラウンソース煮込みポテト添え

店内を素早く動いている若い女性スタッフに一番人気のある料理を2品出してくれと頼んで出てきたのがこの2つです。共に濃厚なブラウンソースで煮てありますが、くどくなくとても美味しい料理でした。なんにでもポテトがついてきますが、このポテトはアイルランド産だそうです。出された料理はどちらも美味しくて驚きました。日本でもなかなか食べられない味でした。我々レコーディングチームはあまりレストランでの食事はできませんでしたが、撮影チームの話を総合すると、やはり圧倒的に食のレベルが上がったようです。イギリスもこの20年でやはり美味しく、気遣った盛りつけになったように思います。バブルは経済に大きな変化をもたらし、厳しい経済環境を作り出しますが、食に関しては効用もあるものだと感心しました。厳しい歴史をくぐり抜けてきたアイルランド。そのアイルランドの食が豊かになり、アイルランドは美味しい。そう言えることがとてもうれしく思いました。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    Y.Iさん

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