連載ブログ 音をたずねて

コング村

2012年01月04日

ジョン・ウエイン主演の名作「静かなる男」の撮影地として有名な、コング村に行くことになりました。ゴールウエイから北上し、マスク湖とコリブ湖という大きな湖に挟まれた小さな村がコングです。人口200人足らずの本当に小さな村の修道院をめざしました。コング修道院は今から1400年ほど昔に建てられた修道院ですが、現在は遺跡として残されています。ケルトの面影が強く残る修道院で、ケルティッククロスやハイクロスがあちらこちらに見られます。もともとは村や農家を撮影するために北に向かったのですが、興味深い場所があるというので連れてこられたのがコング修道院でした。その興味深いモノというのが、この写真にあるモンクス・フィッシング・ハウスです。

修道院に面した村のメインストリート

コング修道院の入り口

コング修道院

修道院は村の中心にありました。かなり広大な敷地をもっており、村は修道院の門前町のように、取り囲むように広がっていました。

コング修道院の回廊

もはや壁だけになってしまいましたがコング修道院の回廊です。その大きさからしても盛期には多くの修道僧達が暮らしていたことが推測されます。

素晴らしく美しい川が修道院内を流れています。

修道院内の橋

これがモンクス・フィッシング・ハウス

鬱蒼(うっそう)とした森が切れると一転して明るい大きな川に出ました。この橋を渡り始めると目的のモンクス・フィッシング・ハウスが見えてきます。

モンクス・フィッシング・ハウス

生活できるほどしっかり造られた小屋

川に突き出るように建てられた石造りの小屋がそのモンクス・フィッシング・ハウスです。今は屋根も扉もない状態ですがきっと藁葺きの屋根と木の扉があったことをうかがわせます。私は趣味で釣りをしますが、この川で一番魚が釣れそうな場所に小屋が建てられているのを見て、思わず笑みがこぼれました。たぶん院長か誰かが釣りをする趣味を持っていて、その方の指示によって建てられたのが推測できるほど、うまい場所に建ててありました。いつの時代も釣り好きのエネルギーは凄いモノだと感心しながら橋を渡って小屋に向かいました。

岸から見た小屋

なんと石でしっかりとした造りになっています。川の上に石でテラスが造られその上に乗っている形で建てられていました。

内部写真

小屋は10畳程度ですが暖炉があり、ベットかベンチに使ったと思われる石造りのものまでありました。川に向かった3方には窓が開き、どこからでも釣りが出来るようなしつらえになっています。床には金網が埋め込まれていますが昔は用を足すために穴が空いていたのだろうと思います。

小屋の下を流れる清流

歴史を遡りたくなる魅力

キンギョ藻が繁茂し、アイルランドの東側とは違い、ホワイト・ウオーターと呼ばれる透明な水が流れ、水深はたぶん1メートル以上あるように思いました。
この良好な環境でしたら、沢山の魚がつれたのではないでしょうか。たぶん、魚はスコットランドと同じように鱒やパイクを釣ったのだろうと思うと、ますますこの建造物を造った人達に興味が湧いてきました。ブドウを栽培してワインを造ったり、牛や羊を飼ってチーズを作ったり、様々な方法で生活している修道僧達は今でもヨーロッパ各地で見聞きしたことはありますが、魚釣りを修行の一部として生活しているのは聞いたことがありません。そしてこれほどまでの施設を造り、運営していたコング修道院の修道僧達はどのような生活をしていたのでしょう。今や廃墟となってしまった、修道院ですが、盛期の頃に戻り、旅人として訪れてみたかったと遠い昔に思いをはせる体験でした。日本の高野山に代表される仏僧も空海が素晴らしい知識や技術を持っていたように、今日の僧侶とは全く違う魅力を持っていたのではないでしょうか。
もっと歴史を研究してみたくなる旅でした。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    Y.Iさん

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