連載ブログ 音をたずねて

海藻ドゥラモン

2012年01月11日

アイルランドの古楽器バウロン(Bodhr Nan)の著名な制作者がゴールウエイから北西にあるラウンド・ストーンという村に住んでいるというので訪ねてみることにしました。車に乗ってしばらく行くと、黄色の草のようなものが海岸全体を覆っている、なんとも不思議な風景が目に飛び込んできました。なんだろう。瞬時には把握できないほど、見たこともない異様な風景を目の当たりにし、すぐに車を止めて降りてみました。

反対側の方向も同じように海藻が岩を隠していました。

浜辺におりてみると、海岸の岩という岩が黄色く輝く海藻のようなもので覆われています。よく見ても日本では見かけない海藻でした。それが辺り一面を埋め尽くし、ときおり日が差すととても綺麗に金色に光ります。まるで誰かが作った舞台演出のようでした。

近くによってよく見ると・・・。正体はこの海藻でした。

岩に張り付いている別の藻まで黄色です。

あまりに見たこともない風景に驚き、写真を撮ることしかできませんでしたが、その美しさは記憶に強く残りました。ホテルに帰って「アイルランドの黄色い海藻」でインターネット検索をかけると、海藻ドゥラモン(Dulaman)という名前と、アヌーナを初めとする多くのアイルランド・ミュージシャンが出てきました。どうやら「ドゥラモン」という海藻の名前が歌のタイトルになっているようでした。さっそくYoutubeで調べてみると「ドゥラモン」という伝統曲があることがわかりました。昔アイルランドではこの海藻を肥料として使っていたらしく、その海藻売りの売り声が歌になったようです。とても面白い曲で、思わぬところで良い曲を発見してしまいました。結局はっきりしたことはわからなかったのですが、どうやら、この黄色い海藻は一般的にはケルプと呼ばれている海藻のようでした。アイルランドでは、昔から生活に利用されている海藻ですが、食べることはしないようです。もっとも海藻を食べそれを栄養として吸収できる分解酵素を持っている民族は少なく、海藻を食べる日本人はとても特殊なようです。

やっぱり美味しいアイリッシュ・ランチ

昼食によったパブ

海藻で時間をとられたので途中の町で昼食をとることになって寄ったパブ。
海に面した気持ちの良い店でした。

ポテトのパイにポテトが乗っています。

アイルランドまで来てカレーを食べる人もいました。

ラム肉のブラウンソースポテト添え。定番です。

どれも気取らない料理ですが本当にアイルランドの料理が美味しくなった事には感動しました。そして量があって安いのがうれしかったです。

バウロンの名工マラキーさん

バウロン制作者マラキー・カーンズさんのショップ兼工房

なんと食事は目的地ラウンド・ストーン村で食べていたことがわかりました。パブから数分足らずで、バウロン制作者として名高いマラキー・カーンズさんのショップ兼工房に到着。

できたてのバウロン

名工マラキー・カーンズさん

アイルランドの古楽器、バウロン。起源は諸説あって定かではないですが、その独特の奏法と音色はアイリッシュ・ミュージックには欠かせない楽器です。タンバリンのような形状で、胴の中には十字のフレームがありそこに手をいれて音の強弱や音程を調節します。写真はマラキーさん自ら演奏してくださっているところです。叩く面は山羊皮で張られ、短いスティックで手首をひねりながら上下で連打します。このスティックは今は木ですが、もともとは山羊の足の骨を使っていたそうです。最近ではドイツあたりで大量生産されていますが、昔ながらの方法で制作されるマラキーさんのバウロンは評判が良く多くのミュージシャンから尊敬を集めています。一つ一つの工程を細かく説明してくださる顔には職人らしい優しさと厳しさが表れ、清々しささえ覚えました。目の前で演奏していただいた音の優しさと力強さが入り交じった、表現豊かなものでした。

Naoko Yamashitaさんと野崎洋子さん

今回のアイルランドは正味8日間で音楽収録から撮影までを行いました。欲張った内容にもかかわらず、多くの収穫と沢山の笑顔に迎えられた旅でした。事前渡航なしにこれほどまでの成果を得られたのは、写真のお二人、アイルランドに住むコーディネーターでサーファー&肉食愛好家のNaoko Yamashitaさんとアイルランドと北欧に魅せられ素晴らしいネットワークを持つ音楽プロデューサー野崎洋子さん、お二人の的確なサポートなしには実現しなかったと思います。音楽の旅は音楽との出会いもありますが、素晴らしいミュージシャンやスタッフ、そして地元の方の優しい笑顔、そしてお客様のご支援なくしては良い作品は生まれないと思っております。
MUJI BGMシリーズもおかげさまで今回で17作を数える事が出来ました。改めて御礼申し上げます。次回作は2012年3月頃に店頭でBGM17として今回収録の音源をお聞きいただけると思います。一足先に、新しい楽曲を使用したスライドショーを用意いたしました。お楽しみいただけたら幸いです。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    Y.Iさん

スライドショー

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