連載ブログ 音をたずねて

建築博物館のようなプラハ 2

2012年02月29日

前回に続き、建築博物館のようなチェコの建築様式についてお話しします。もっとも私自身、建築は素人なので間違い等もあるやも知れませんが、チェコの建築の多様さを皆さんになんとかご紹介できたらとの思いで書いております。解釈の相違等があるかも知れませんがなにとぞご容赦ください。このブログはレコーディングの合間や撮影スタッフの写真を整理してご紹介いたします。

ルネッサンス様式

ルネッサンス様式の美しい、チェスキー・クルムロフの城

プラハから直線距離で140kmほど南に下ると、世界遺産の街チェスキー・クルムロフがあります。この川に囲まれた小さな町はゴシックとルネッサンス様式の建物が混ざり合ったとても美しいところです。上の写真はその町にあるルネッサンス様式の代表チェスキー・クルムロフ城です。16世紀頃イタリアから始まったルネッサンス様式はイタリア人によってチェコにもたらされました。そしてチェコの厳しい気候に合わせ、独特のチェコ・ルネッサンスが生まれました。ルネッサンス様式はシンメトリーで窓が長方形をしている事に特徴とされていますが、長い年月の間に様々な様式が混ざり合い若干わかりにくくなっていました。チェコではルネッサンス建築用の石が手に入らなかったため、チェコルネッサンス様式の外壁には「スグラフィット」と呼ばれる重ね飾りの装飾が施されました(下の写真)。

チェスキー・クルムロの城のスグラフィット

プラハ城正面のシュバルツェルンブルグ宮殿の見事なスグラフィット

ネオ・ルネッサンス様式

プラハ市内の芸術家の家

16世紀頃に盛んに作られたルネッサンス様式ですが、この写真は1884年に建てられた比較的新しいネオ・ルネッサンス様式「芸術家の家/ Dům Umělců」と呼ばれる建物です。中には有名なドヴォルザーク・ホールがありチェコフィルの本拠地ともいえる建物です。

バロック様式

バロック様式を代表する聖ミクラーシュ教会

聖ミクラーシュ教会入り口

チェコのバロックは白山の戦い(1620)から始まりました。プロテスタントに勝利したカトリック派の信仰回復が推進力となり、その財力によって西ヨーロッパから芸術家を呼び寄せ、独特なチェコ・バロックをチェコの職人と共に形成しました。このルネッサンス様式はに続く古典主義は信仰回復の勢いに乗って、豪華な建築物をいくつも作り上げました。現在、チェコ国内のあらゆるところで眼にすることができます。

聖ミクラーシュ教会内部

アール・ヌーヴォー

アール・ヌーヴォーの代表的建築物 市民会館

ご存じのように、アール・ヌーヴォーは19世紀から20世紀に初頭にかけてヨーロッパを中心に開花した美術運動です。ここプラハにも、そのアール・ヌーヴォー様式がいくつも建設されています。中でも有名な建築物が上の写真プラハの市民会館です。

市民会館のエントランス

市民会館レストランの内装

そしてアール・ヌーヴォーの旗手、ご存じのアルフォンス・ミュシャも実はチェコの出身です。パリでの活躍がとても印象深いのでチェコ出身と思えないのですが、20代後半からパリで活躍し50代からはチェコに戻り活動をしていました。この市民会館正面ドームの壁画やプラハ城内聖ヴィート大聖堂の内のステンドグラスが彼の作品として有名です。

ヴィート大聖堂の内のステンドグラス

2回のブログでは書ききれないほど多くの建築様式がプラハにはあります。ご紹介した以外にも、ロココ様式、キュビズム、近代的な建築まで入れると膨大な建物がチェコ、プラハには混在しています。千の塔を持つ街、黄金の街などプラハを褒め称える言葉は数多くありますが、建築博物館と呼ばれる理由が良くわかりました。

ダンシング・ハウス

ダンシング・ハウス

ダンシング・ハウスと呼ばれるナショナル・ネーデルランデンビル。チェコとスロバキアの分離後、ヴァーツラフ・ハヴェル大統領によって民主化の象徴として1996年に建てられました。当時のプラハでは賛否両論があった斬新なデザインはフランク・ゲーリーとウラジミール・ミルニッチの設計です。

ここを紹介してくださったイジーさんも少し照れ笑いしながらの案内でしたので、このビルはさすがに斬新過ぎたのかもしれません。チェコの建物を見て歩くと、アールヌーボーヴォあたりから、様式よりもデザインに移行していったように感じました。今回は駆け足でご案内いたしましたが歴史に翻弄されながらヨーロッパの文化をこれほど豊かに自分のものとして集積している街は少ないのではないかと思います。チェコのすばらしさは、歴史的価値のある建物が保存建築物ではなく、今でも使われていることだと思います。伝統音楽にも言えることですが、民族の歴史は脈々と受け継がれ現在を経由して未来に続くものだと思います。そういう意味でチェコの豊かな文化遺産はまさしく今を生きていると思いました。チェコの人々の生き方自体が建物や音楽に象徴され、彼らの思想のようにさえ思えました。
次回はチェコのとても小さな町スヴァティー・ヤン・ポト・スカロウをご紹介します。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    Y.Iさん

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