遠くて近いスコットランド
島ケルト四地区の一つスコットランドの旅、スコットランドのブログは10回にもわたる長いものになりました。今回は撮影だけの旅でしたので多くの場所を訪れることができました。もともと無印良品BGMは世界の各地で暮らす、私たちと同じ生活者の共通の思いをお伝えすることがコンセプトになっています。うれしいこと悲しいこと辛いこと、そのすべてが昇華され、伝統音楽の中に生きています。店内で皆様のお耳に届いたとき、その調べを通して見知らぬ土地にも同じような思いで生きている多くの仲間達がいることをお伝えできたらと思っています。その意味ではこの旅はスコットランドの半分近くを巡り、さまざまな体験が出来たことは大きな成果でした。あまりにも多くの出来事に出会い、驚き、刺激を受けた旅でした。稚拙な文章で、お伝え切れていないことを申し訳なく思います。今回はスコットランド・ブログの最終回として全体を纏めてみたいと思います。
日本と似ている宗教観
ケルティック・クロス
スコットランドを旅しているととても日本に似ている感覚を覚えます。風景や生活様式は違うのですが、人々の行動原則とでもいうようなもの、感覚的なのですがとても似ている気がします。この辺りを私なりの解釈で少し書いてみます。
スコットランドの桜、とてもたくさん咲いていました
スコットランドといえばケルト、今回のBGMは伝承されたケルト音楽と思われる楽曲を集めました。ケルト音楽はとても日本で好まれます。無印良品に一番似合っている音楽とお声をお客様からいただくことも多くあります。このケルトの文化と日本文化はとても似ているところが多くあるように思いました。
スコットランドの水仙です。この花もたくさん咲いていました。
その一例ですが、古代ローマやケルトの国々では冬に寒さを吹き飛ばすかのように、人々は陽気にご馳走を食べ、贈り物をしあい、豊穣の証である常緑樹を飾ったそうです。冬でも緑の葉を持つ植物は、永遠の生命のシンボルとして、魔除けや薬に用いられた他、健康を祈ってヒイラギ(柊)やイチイ(一位)、ヤドリギ(宿木)など実のなる木の枝を飾りました。正月に門松を置き、室内には常緑で赤い実をつけるセンリョウ(千両)、ヤブコウジ(藪柑子)、ナンテン(南天)などを飾る日本と、とてもよく似ています。ドイツの「自然のクロイセ」、オーストリアとハンガリーの「クランプス」も、日本の「なまはげ」とそっくりな風習です。
自然の対峙する生活
人間は大自然と寄り添うため自然を崇拝し、また自然のサイクル=暦を発見しました。厳しい自然に立ち向かうために、親しい仲間や家族が集い励まし合う場が季節ごとの祭として生まれ、先祖や大自然に対する感謝の場として続いてきました。音楽はそのような場の共通の楽しみとしてそして連帯の証として、生まれ伝承されてきたと思います。古い時代においてはスコットランドも日本も、島国の厳しい自然環境の中で同じ思いで生きてきたのではないでしょうか。
スコットランド産の馬(クライスデールかシャイヤー種)
ハロウインは古代ケルトのサムハイン祭が起源といわれています。新しい年と冬を迎える祭りで、この日の夜に死者の魂が家に帰ると信じられています。まるで日本のお盆の習慣のようですね。輪廻転生の宗教から生まれた、ケルト神話には「浦島太郎」のような日本の民話や「天岩戸」の神話にも通じる話が沢山あります。写真のスコットランドの馬は労働や重たい鎧を着けた武人を乗せるため、しっかりした体格をしていますが日本のばんえい競馬の馬ととても良く似ていますね。
自然との共生から生まれる律儀さ
ジョンズヘイブンの漁師さん
同じくジョンズヘイブンの漁師さん
ドライバーのデビットさん
モントローゼでお会いしたご婦人
ピートを掘ってくださったスペイサイドの酪農家
ジョンズヘイブンの漁師の奥さんとドライバーのマイクさん
グレンフェディックのレストランの女性
マッカランのギリーさん
どうでしょう。スコットランドの風景とお会いした皆さんの写真ラッシュをしてご覧いただきました。場所、姿かたちも日本と異なりますが、日本に近い風景やどことなく少し前の日本人の持っていた雰囲気を感じていただけたでしょうか。うまく言葉に出来ないのでこのような形を取らせていただきましたが、いかがだったでしょうか。ケルト文化から続く自然崇拝や輪廻転生の宗教観がどの程度、影響しているのかは定かではありませんが、実直な姿勢、親しみやすい雰囲気、真面目な対応、贅沢ではないがきちっとした身繕い、礼儀正しい応対、物静かな話しぶり、頑とした信念、自国の文化歴史を愛する思い、時々出るジョーク、写真から感じていただけましたでしょうか。私がスコットランドを旅して感じた印象を並べてみながら、思い浮かんだことは明治から大正、昭和初期の日本人の姿でした。収録した音楽も自然に心に入り込んできます。遠く離れた日本とスコットランドですが同じような文化と思いが息づいていることがとてもうれしい旅になりました。