連載ブログ 音をたずねて

コーンウォールの朝はとても早い

2012年10月24日

日本からヨーロッパに来ると必ず朝5時頃に目が覚めてしまいます。今回も少し寝不足ながら、定刻に目覚めてしまいました。昨夜の騒ぎが嘘のように静まりかえったホテルの窓から見下ろすとウエイドブリッジの朝はもう始まっているようでした。朝食まで少し時間があるのでいつものように外に出てみました。

ホテルの前の町並です

町の中をフラフラ散歩しホテル前の通りに戻ると、デリカテッセンや隣の荒物屋さんまで店開きを始めています。時計はまだ8時前でした。近くに学校があるのか、学生の姿がだいぶ増えていました。とても真面目な土地柄を感じながらホテルまで戻ると。

今回のカメラマン藤岡直樹さんがにこにこして立っていました。やはり彼も5時起きのパターンのようで、起きてすぐカメラを持って一回りしてきたようです。チームのメンバーもそれぞれ散歩にでているようで間もなく戻るとのことでした。藤岡さんはこのBGMシリーズで一番多く参加してくれているカメラマンです。コマーシャルフォトから自身の作品に共通する雰囲気のある作風はこのシリーズに欠かせないカメラマンです。

登校する学生達

藤岡さんと立ち話をしている横を中学生くらいの女子学生が登校して行きます。

男子生徒達もだいぶ集まってきました。

いつもは大きな街に滞在することが多いので、こんなに間近で日常の風景に出会うことはとても希です。この朝は地元の生活を感じることのできる貴重な体験でした。

コーンウォールはケルト史跡の宝庫

食事もすませラウンジでコーヒーを飲んでいるところに、今回収録のサウンド・プロデューサーでコーンウォール・ケルトの第一人者マイク・オコーナーさんがいらっしゃいました。ロンドン在住のコーディネーター藤原さんに紹介いただき、資料やデモテープのやりとりをしてきましたが、お会いするのは今回が初めてです。大学で教鞭を執られているとうかがっていましたが、まさにミュージシャンというより大学教授という風貌で少し近寄りがたい第一印象でした。ところが話しを始めるとまったくのミュージシャン、次から次へと音楽についての話や質問が笑顔と共に飛びだしてきました。

特に素晴らしかったのは彼が集めた音楽的資料の豊富さでした。最初に見せていただいた資料はコーンウォールの中世の貴族は四人の恒久的な楽団を有していた。編成は二つの管楽器と他の楽器を持つ吟遊詩人。また古い時代にはハープと管楽器、パイプ、フィドルなど様々な楽器の編成があったことが資料から考えられると言うお話しをうかがいました。今までスコットランドとアイルランドではここまで歴史的な事実を追いかけていなかったのでとても興味深い思いがしました。

西暦1260年頃の四線譜の楽譜です

こちらは西暦1620年頃の楽譜五線譜になっています。

今回の収録はこれらの古い楽曲を再現し、マイク・オコーナーさんが編曲・構成した曲と地元口伝の伝統曲で編成して収録したいというのがマイクさんの提案でした。勿論OKです。インターネットを通じて音源としては聞かせていただき、今回の収録に期待をしていた我々ですが、実際にその元となる資料を拝見させて頂き、今回のレコーディングへの期待と貴重な機会を与えてくださった事への彼に対する感謝の思いが沸々と湧いてきました。

今回のミュージシャンはすべて地元の優秀なメンバー、あなたたちが撮影をしている間に最後のリハーサルをするので安心してくれと優しい言葉を彼からいただき握手で別れました。アイルランドやスコットランドの音楽資料は、日本でも比較的手に入りやすいのですが、コーンウォール・ケルトについてはとても苦労しました。事前調査では希望に添う音源が見つからず、コーンウォールの調査には3年を費やしました。あまりにも良い音源がないので、もはやコーンウォール・ケルトの音楽は潰えてしまったのかと思うほどでした。そんな中、マイクさんと出会い思った通りの楽曲に出会えたことはとても幸運でした。そして今回の収録の為にコーディネーターの藤原さんが調べてくれたケルト遺跡の資料数も素晴らしいものがあります。別れ際に彼は先ほど見せたセント・メリー教会にぜひ行ってみた方が良い、あの資料の実物が見られるからと場所を教えてくれました。興奮がさめやらぬ中、さっそくジャケットのための写真撮影に出かけることにしました。次回からはこの史跡をご紹介して参ります。どうぞお楽しみに。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    Y.Iさん

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