連載ブログ 音をたずねて

本場カンペールのガレット

2013年01月30日

市場で美味しそうな食材を見ていましたら、とてもお腹が空いてきたのでランチにすることにしました。今回は地元ミュージシャンのトーマスさんのご推薦、カンペールで一番うまいガレットの店「Creperie du Frugy」に向かいました。大聖堂から南に橋をわたったセント・テレース通りにあります。大聖堂からはほんの10分ほどの距離です。トーマスさんが一番と言うだけあって観光ガイドサイトでも最高得点を獲得していました。このクレープリーという聞き慣れない名前はクレープのお店の総称で、このブルターニュ地方ではカフェの数よりもクレープリーのほうが多いそうです。

古い町の一角、このワンショットで3件のクレープリーが並んでいます

ご存じの方もおられると思いますが、このガレットと呼ばれるクレープのような品は、材料がそば粉で出来ています。土地が痩せているブルターニュ地方では昔からそばが盛んに作られました。薄く焼いた生地に生ハムやベーコン、キノコや野菜、卵などの具を乗せて包み、仕上げに有塩バターを塗って食べるのが一般的だったようです。ブルターニュではガレットが始めに誕生しました。ガレットを主食としていた時代が長く続いたそうです。小麦生地で甘い素材のトッピングをほどこす、いわゆるクレープが出てきたのはずいぶん後になってからだそうです。今では沢山の数のガレットとクレープがクレープリーのメニューを賑やかにしています。

お店の前にメニュー

ブルターニュ地方の郷土料理だったガレットが今では日本のあちらこちらでも見かけます。日本で紹介されているガレットは豪華なトッピングがほどこされていますが、トーマスさんがオーダーしたガレットはとてもシンプルなものでした。下の写真をご覧ください。手前のなにものっていないガレットがトーマスさんがオーダーしたカンペールでとてもポピュラーな食べ方だそうです。きれいに焼いた生地の中にキノコをバターソースで味付けをした具が入っているだけのシンプルな一品です。その上の写真はハムとチーズ、卵をトッピングした日本で見かけるタイプです。ガレットはそば粉の味を楽しむために出来るだけ何もしないで有塩バターのみで食べるのが本来のようです。日本の蕎麦の食べ方にとても良く似ていますね。

地元食材を楽しむ贅沢な郷土食

ガレット2種

この有塩バターにも秘密がありました。ブルターニュは酪農がとても盛んなところで昔から良い乳製品の産地です。そしてカンペールから東に200kmほど行ったところにはゲランドの塩湖があります。ブリトン語でGwenrann/白い土地と呼ばれるこの地では、1200年以上前の9世紀頃から機械をほとんどつかわず、太陽と風、粘土質の地層を生かした伝統的手法を用いる塩職人によって世界中のシェフが絶賛するゲラントの塩が製造されています。この塩と酪農とが相まって、有塩バターを始めとする美味しい加工食品が沢山あります。まさにトーマスさんが食べていたガレットがこのカンペールのガレットといわれる由縁でとてもうなずけました。

包んでないタイプもありました

このお店には2度行きました。勉強のためにいろんなトッピングを試した中のひとつがこのベーコンだけのガレットです。生地を焼いた上にのせたのではなく、お好み焼きのように一緒に焼いた感じでした。食べさせていただきましたが、ベーコンの肉と塩の味が蕎麦とマッチしてとても美味しい品でした。

これは中身を忘れましたがレモンがのっていますので貝だったように思います

また海に近いカンペールでは豊かな海からの産物も手に入ります。そして森からの恵みもあります。これら地元の食材を生かしたガレットという料理は、まさにカンペールの気候風土が生んだ伝統食のすばらしさだと思いました。毎日食べる食事は素材を大切にしたシンプルな料理が一番美味しいという食の見本のような料理でした。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    Y.Iさん

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