連載ブログ 音をたずねて

BGM制作裏話

2013年04月10日

今回は無印良品BGM制作の裏話を少しいたします。BGMの制作では音楽収録部隊と撮影部隊の二つのチームでロケ地に向かいます。特別な場合を除き音楽部隊2名、撮影部隊2~3名の計4~5名のチーム編成です。

音楽担当の私は、音楽収録のない日は撮影隊に同行致しますが、音楽収録の時はスタジオから外には出られない状態になります。ですので、このブログは撮影隊の写真と情報をもとに書く場合もあります。仕事の裏側を知らない友人から「いろんなところに行けて、美味しい料理を食べて、いい仕事だな」と言われることがあります。実際はホテルとスタジオの往復です。今回は外を巡っている撮影隊の羨ましいロケ風景をご紹介致します。

無印良品BGMのCD用の写真は観光的な写真は一切撮らないことが決まりになっています。無印良品らしい写真、現地の生活や自然環境を印象として収める、伝統が今に息づいている写真、となかなか難しい注文に縛られながらの撮影になります。言葉も通じない中での撮影です。今回は新進気鋭の女流カメラマン渡辺由香さんに同行をお願いしました。

そういう意味では事前に準備がしにくく現地に着いてから光や風景、街の細部をくまなく探すようなロケになります。用意されたモデルがいるわけでもなく、目の前にある日常の瞬間をどう切り取れるかが勝負になり、フォトグラファーとしてはかなりスリリングなロケです。それでも写真のようにお祭りや地元の方の集会に出会ったりして幸運な事も数多くあります。

シーンにであったら一生懸命

ロケには無印良品BGMのCDデザインを担当し、多くの賞を受賞しているクリエイティブ・ディレクターの新村則人さんも同行します。少ない人数での限られた期間の中ですので体当たりのロケになります。今回も浜辺で出会ったかわいい少女を撮影させてもらうため、一生懸命な努力をしています。今回発売されるMUJI BGM18はこの時の写真がライナーの表紙を飾りました。

これはフォトグラファー渡辺由香さんのワンカットです。アップの写真は多くを語ってくれます。BGMのCDではよく使われるアップの写真ですが瞬間でそのシーンを押さえるのはなかなか難しい技術だと思います。

時間が限られている中での撮影のためシャッターチャンスを逃さないため、撮影部隊全員が写真を撮ります。この写真は撮影部隊のスタッフが撮った写真です。BGM1作のロケで3千枚近い写真が集まり、現在では5万枚を越える写真ストックになっています。

今回もたまたまブルターニュ地方のお祭りに遭遇し素敵な民族衣装をまとった地元の方々を写真に収めることが出来ました。こういったことはとても希で運が良かったと思います。こうしたロケですので車でまわっていたのではなかなか良いシャッターチャンスに出会うことは難しく、朝から晩までかなりの広い範囲を足で稼ぎながら撮影し続けるロケになります。体力がないと出来ない仕事ですね。

歩き回ったご褒美

少し疲れた顔をしていますがやっと休憩。すかさずスイーツで血糖値をあげる魂胆のようです。スタジオ部隊は決められた楽曲をミュージシャンと一緒に最高のテイクを録音することに専念しますので体力は使いませんが、食事や観光については多くを望めない環境にあります。撮影部隊は体力を使いますが素材の撮影がうまく進むと、歩き回った分、良い場所や美味しい食事にありつくことが出来る良い面もあります。

撮影部隊から預かった写真の中にこういった写真が入っているとなんとも羨ましく思います。美味しかったとは言え、スーパーマーケットで買ってきた食材で数日間を過ごし、どこも見ることが出来なかった音楽収録部隊の私としては心穏やかではないときもあります。

ただ渡辺由香さんのこういった写真を見せられると、足で稼いだ労力とコンセプトに忠実な姿勢、写真の美しさにご褒美の美味しそうな食事を納得してしまいます。このようなロケで撮影された写真が無印良品BGMのクラフト紙のジャケットの中に収められています。過去の写真もお客様から多くのお褒めをいただきました。
この度のブルターニュ収録で数年をかけた、アイルランド、スコットランド、コーンウォールを含めた島ケルト四地方の音源と写真がすべて揃いました。これを機会に多くの皆様に写真部隊の仕事をご覧いただきたく、4月末から無印良品有楽町アトリエMUJIで「島ケルト四つの風光」と題し写真展を開催致します。詳しくはあらためてご案内致しますが是非ご覧いただければ幸いです。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    Y.Iさん

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